02


ハルの格好をした柳生先輩は体を起こして私と向かいあった。
ハルよりも若干鋭いその瞳は私をどんな人物か観察している。
あまりされてて良い気にはならないけれど、そういうの、嫌いじゃない。

「初めまして、ではないですね。お弁当の事はありがとうございます」
「お気になさらず。貴女は仁王君とどういう関係なのですか?」
「幼馴染ですよ」
「なるほど、そう言う事ですか。なら納得できますね」
「え?」
「いえ、こちらの話です」

ハルと何か話でもしたのか?
というとやっぱり泣いてしまった時の事についてか。
で、ハルがそう言う事を聞くのは珍しかったから印象に残ってた、という事かな。

「改めて、私は舞です」
「柳生比呂士です、よろしくお願いしますね舞さん」

柳先輩と言い、柳生先輩と言い、流石に察しがいい。
名字を言わない理由が名前で呼んで欲しいではなく名字を名乗りたくないと。
何も言わずとも気づき、そして何も言わない。

「柳生先輩は今、コンタクトですか?たしか眼鏡をしてると聞きましたが」
「ええ。ですから今仁王君は、私に変装してる彼の眼鏡に度はありませんね」

やっぱりか。
試合中に柳生先輩が使う本当の眼鏡を使用すると視力がいいハルには辛すぎる。
そして柳生先輩は何も見えなくなる。
ならコンタクトを使ってると思った。

「何故、紳士と呼ばれる貴方がペテンに付き合ってるのですか?
 脅されてるとかそういう風には見えません」
「正直に答えるとですね、私は仁王君のペテンが結構気に入ってるのですよ」
「気に入ってる、ですか」
「一日一善、これが私の信条です。それに喜んで下さるのを見るのが好き出してね。
 しかし仁王君のペテンは騙す、詐欺に合わせる。
 そんな事をしているのに仁王君は周りを魅せて楽しませてます。
 こういうやり方もあるのだと関心してました。
 ですからその手伝いをするのが私も楽しいのですよ」

微笑んで答える柳生先輩。
あぁ、そうか。
この人は全然根っからの紳士じゃない。
本物ならばこんな事はしない。
でも、だからこそ何よりも本物だ。
違う事を認めるのは強い。

「貴方は凄いですね」
「面白い事をいいますね舞さんは」

変な奴って言いたいのか。
否定されたけれど。



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