06
立海に入るにあたってやるべき事がある。
宿題は勿論、これは私の生命に関わる事なのだ。
「ハル、私、立海に入ったらハルの事を仁王先輩って呼ぶから」
「なんでそんな他人行儀な言い方するぜよ」
一階のリビングでスポーツ雑誌を読んでいたハルはいかにも不満そうな顔をしてこちらを見る。
「他人行儀にしたいの。というか学校では近づかないで欲しい」
「ファンクラブか」
「察しがよろしいようで」
そう、ファンクラブ。
以前言った時に怖さは改めて実感した。
ハルのと仲良くしてたら校舎裏に呼ばれてはい、リンチ。
そういう展開が丸見え。
平凡とか求めてるわけじゃないけど面倒事はご免こうむる。
「舞は俺が守ってやるきに。安心しんしゃい」
「意味ないって。万全じゃないし、倍増する可能性もある。ハルもそのぐらい考えついてるでしょ」
「じゃが」
納得してないな。
絶対にくいとめる方法考えてる。
てか、なんでそこまで拘る。
「じゃあこうしよう」
「なん?」
「私が立海で変装をする。ハルにはその変装を教えない。
ハルは立海で私を探し当てる。賭け事だよ。
勝てば今までどうりしていい。
負けたら、ま、そもそもその時点で私の思いどうりだしね」
「詐欺師に賭け事か?面白い、受けてやるぜよ。時間制限は?」
「半年」
「了解なり」
こうやってハルのプライドというかそういうのを刺激すれば受ける。
嵌めてるわけじゃない。こんなのでハルがはまるわけない。
妥協、かな。
でも変装しなきゃいけないのか。
自分で言っておきながら面倒くさいな。
変装をどうしようか考えなきゃいけないけどとりあえずこれでいいだろう。
やっぱりハルは機転がきくから話が早くて助かる。
よしよし、と心の中で思ってた所に百合さんが爆弾発言を落とした。
「あ、今度、大阪に転勤になったの」
キッチンからひょい、よ顔を出して言う百合さん。
ちょっとそこまで出かけてくる、みたいな軽いのりで。
「「は?」」
ハルとはもる。
「だから、大阪に転勤。本当はそろそろ定住したいなぁ、って。
思ってたんだけどね。無理でした」
「じゃあ、また引っ越しか?」
あ、嫌そうだなハル。
しょうがないだろうな。
折角テニスも、友人もできたのに。
あっちで受け入れてもらえる可能性は確実ではないから。
「二人とも私立でしょ?雅治も学校が楽しいみたいだしね。
だから二人暮らししなさい。中学生だから大丈夫でしょう」
大丈夫。だが中学でそれっていいのか?
保護者の問題とか。
モラルとか。
「学校からも許可貰ったし」
根回しは完了してました……!
「ここから学校が遠いでしょ。もうちょっと近いマンションでも借りてね」
……新たに処理しなければいけない問題が生じました。
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