04


「舞、どうしたんじゃ」

ハルの声。
思わず顔をあげるとびっくりされた。

「な、何があった!?もしかしてファンクラブの連中じゃなか!?」
「ち、違う。違うの」

子供みたいに頭を振るだけで何も説明できない。
私って、こんなに子供だったけ?

「何があった?言いんしゃい」

言えるわけが無い。
これは私だけが持つ業だ。
生まれ変わるための対価だ。
何も言わない私にしゃがみ込んでそっとハルが抱きしめてくれた。
人の体温が心地いい。

「舞が言いたくなかったらそれでいい。
 じゃが、泣きなさんな。舞が泣かれたら俺はどうしたらわからん」

思えば、かなり不審な私を何も言わずにハルは何も言わずに信じてくれた。
家族が好きで何もない円滑なのに帰る事を拒む矛盾した所の理由を聞かなかった。
私は、ハルにかなり甘えてたような気がする。

「ごめん……」
「謝りなさんな」
「色々、ありがと」
「幼馴染みじゃ、当然なり」
「ハル……私、来年は立海に行く」

覚悟を、決めよう。
私が中学に通っている間。
その間に覚悟を決めて弦兄ときちんと再会する。

「……そうか」
「ハル、もう放して」
「ぴよっ」

ハルが放してくれて、私は立ち上がる。

「帰れるか?」
「大丈夫。もう小六だよ?子供じゃないんだからさ」
「ほ〜う?今の今までめそめそ泣いてた奴が何言っとるんじゃ」
「うるさい!」

ニヤニヤ笑うハルを睨む。
気を使ってくれてるんだって解る。

「仁王、なにしてるんだい?」
「あぁ、幸村」

いなくなったハルを探してたのだろう。
藍色のパーマのかかった髪。
中性的でそこんじょそこらの女の子より綺麗な儚い容姿。
神の子、幸村精市。
将来難病にかかり生死の境を彷徨う事になる。
もしかしたら、私のせいで運命が変わってしまう可能性が高い人。

「ちょっとな」
「その子、泣いてたみたいだけど。仁王、何かしたの?」
「ハルは関係ありません。気にしないで下さい。ほら、ハル。朝練に戻りなよ」
「けど」
「いいから」
「……了解なり。弁当、ありがとさん」

ハル達が去ったのを見てから踵を返す。

帰ってから百合さんに心配されたが笑って誤摩化した。
そうしたら百合さんは何も言わないでくれた。



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