03


来ました立海。

「「「キャ〜〜〜!!!」」」

テニスコートからすると思われる女子どもの甲高い黄色い応援。
平日だから他校生とかはいないけど、朝練でこれとは……。
朝練が終わった後なら職員室に行って担任にでも渡せば事は済んだのに。
あぁ、近づきにくい。
ファンンクラブが怖い。知ってたけど、改めて見て怖い。
さーて、どうしようかな。
ハルはまだレギュラーじゃない。
イリュージョンがまだ完成してないからね。
だからまだ被害は少ないかもしれないけどこういう考えが甘っかたりする時があるし。
テニスコートから少し離れた所で思案する。
コートから出た所にいるテニス部員Zぐらいの奴とかいないかな。
お、丁度水を飲みにコートを出た部員がいる。
水飲み場はあのファンクラブ達から見えにくい。
場所もここから遠くない。
走って部員に近づく。

「あの、すいません」
「はい、なんでしょうか」

振り返ったのは茶髪で七三分け、そして逆光眼鏡をした人。
そう来たか。
柳生さん(先輩だから呼び捨ては失礼だよな、そういえば)はなんだか警戒している様子。
ファンクラブの一人にでも思われたのか。
しかし紳士という異名を貰うだけある。
そういう態度はとらない。

「仁王 雅治の知り合いてというかそんな者でして。
 彼の母親に頼まれて(わざと)忘れたお弁当を届けにきたのですが」
「それならば直接、仁王君に渡されてはいかがですか?」

気をきかせる振りして警戒はとかない、か。
ハルとダブルスを組んでるだけある。

「ファンクラブが怖いです」
「ああ……そうですか」
「渡してくださればいいですから。百合さんからって。
 それでいらない言ったらどうぞ捨てて下さっても構いません」

怒られるのは私じゃない。
申し訳ないけど弁当を押し付けて立ち去る。
紳士だからそのままにはできないだろう。

柳生さんから離れて改めてテニスコートを見る。
テニス部員が一生懸命練習している。

「黙らんかぁ!!」

いきなりの怒鳴り声に肩が跳ね上がる。
この声は……。

弦兄。

やっぱりかなり背が高くなった。
声も少し低くなってる。
成長期と声変わりが始まったのだろう。
まだ、老けてない。
性格も、相変わらず。

目頭がツーンとくる。
まずい、泣きそう。
だって私は弦兄のもとに戻る事を躊躇ってる。
弦兄は私の事なんて忘れただろうか。
いや、忘れてないだろうな。
責任感が強い弦兄だし。
元気で、良かった。

「っつ――!弦に……!!」

涙が止まらなくて隠す為にしゃがみ込む。
こんな妹でごめんなさい。
弱くてごめんなさい。
家族の元に帰る事を躊躇うこんな自分勝手な子で、ごめんなさい。



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