03
ノートを構える蓮二先輩。
猛烈にデータが書き換えられている。
「仁王の本気、しっかりとデータをとらせてもらおう」
「今まで本気じゃなかったとは、たるんどる」
「ま、それゆえの詐欺師なんだろぃ」
「本気を見せず、飄々として相手を騙す。
正直ここまでとは私も知りませんでしたね」
「この様子だと俺達の出番はなさそうだな」
「……これで最後ですね」
あと一点。
不二さんもねばったけれどこれで終わりだろう。
「最後にとっておきの、見せてやるぜよ。
唯一の俺自身の技をのぉ。
何処で出すかお前は見切れるかの」
クックック、とハルが笑う。
数球、穏やかなラリーが続く。
ハルがこう言ったから警戒しているに違いない。
不二さんが返す。
ハルも返す。
また不二さんが、
「っ!?」
返そうとした玉は確かにガットに当たったように見える。
けれど。
「打った感覚が」
「何処みとる。あっちぜよ」
見れば。
不二さんの少し離れた所にボールがすり抜けた。
「なっ!」
「これが、俺の唯一の技。
俺のイリュージョンと同じ原理じゃよ。
お前が俺を手塚や白石とかに見えたように。
お前はボールの幻影を見たんじゃよ。
だから、本当のボールは見えない。
夢現の幻。
故に、『夢追い』…」
ちょっとチート技だけどね。
でも他にもチート技ってある。
それに心を落ち着かせられれば。
じっくりとしっかりと見ればかすかに本物のボールの姿は見る事はできるから。
完璧なわけじゃないけれど。
因に命名は私。
ハルに頼まれたんだよね。
この世界はいちいち名前を付けるけれどまさか私が付ける事になるとは思わなかったよ。
「プリッ」
「ゲームセット!!」
歓喜の声が響き渡った。
前 次
戻る