02
急に試合の流れが変わった。
今は完全にハルのペース。
「舞、どういう事か説明してくれる?」
「いいですよ、精市先輩」
目の前で繰り広げられている試合。
完全に不二さんが弄ばれている。
なのにハルはイリュージョンは使っていない。
「イリュージョンはそもそも『技』じゃないんです。
ただ自分を他人に見せる錯覚を起こさせる物。
それによって多少の能力の底上げはできます。
けれど選手の模倣はイリュージョンの効果ではなくてハル自身でやっているんです」
だからハルが使えない技、例えば零式サーブはイリュージョンを使っても使用は不可能だ。
「だから、ハルは素で無我を使えます」
ハルが無我に達したのは小学校六年の時。
百錬自得の極みは中学二年の時に。
どれも秘密にしていた事。
今、才気煥発は攻略されたが百錬自得の極みは攻略されていない。
だから今もハルは百錬自得を使っている。
「それにハルのプレースタイルは少し特殊です。
全てのプレースタイルを組み合わせて戦うんです」
今はネットプレーをしている。
だんだん不二さんがハルのネットプレーになれたとたん。
「ああ、今度はカウンターパンチャーですね」
ハルはニヤニヤと笑いながら挑発して。
慣れ始めるたびにコロコロとプレイスタイルを変える。
ありふれたようなプレイスタイルから
三強や跡部さん、全国の猛者達を沸騰させるまで。
「あれが、ハルの本当のプレイスタイルなんです」
「今まで黙っていたのか……。
悪魔でも騙せるって言ったのは俺だけど本当に怖い詐欺師だな」
「それだけではありませんよ」
ハルはイリュージョンはずっとそのままの姿でプレーしていた。
そかし本当にイリュージョンの能力が発揮する使い方。
それは、今言ったプレイにさらに数球分だけイリュージョンを組み合わせる事。
時々姿が変わるからそれだけで動揺はさそえる。
何度も変わることによってだんだん感覚が麻痺していく。
コロコロ変わるプレイスタイル。
違う選手の姿。
自分はいったい、誰と戦っているのだろう?
そう、思ってしまう。
「仁王 雅治」の存在が朧げになってまるで見えない相手と戦っているように見えてしまうのだ。
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