05


電話越しで精市先輩の笑い声がする。
精市先輩に今日練習試合を申し込んだ事を報告しているのだ。
申し込む事は言わなかったけれど精市先輩は許可を出してくれる事は予想済み。
そして精市先輩が頷いた以上は皆も従うしね。

「舞は意外な人脈を持ってるよね」
「そうですか?」
「百合さんだっけ、その人のつながりなのかな?」
「まぁ、そうですね。四天宝寺の人達は。
 去年の夏に知合いまして。
 それを言うならハルもそうですよ」
「ふぅん?
 まぁいいや。丁度いいしね。
 返り討ちにしてあげるだけさ。
 負けたら、フフフ…って、皆に伝えてね」
「了解しましたよ、精市先輩。
 一言一句間違わずに精市先輩の声で伝えます」

あまり使う事のない声マネ。
だからこそ効果があるかなー、なんて思う。

「じゃあね」
「はい」

その後に皆に連絡網を回すと精市先輩の声に驚いていて少し笑った。
けど蓮二先輩とかは冷静。
電話越しで何か書いている音が聞こえた。
逆に反応が良かったのは赤也かな?
出た瞬間に「ふふふ」て笑ってみたから。
一番からかいがいがいがある。
おまけ同学年だし。
私は先輩でからう趣味はない。
最後のハルに言い終えて電話を切ろうとした時にハルが待ったをかけた。

「なぁ」
「何?」
「全国が終わった後に俺の家に泊まりに来んか?」
「泊まりに?なんで?」
「まぁ、ちょとな。駄目か?」
「弦兄が渋るかも。それって泊まりじゃないと駄目?」
「俺の家に来て欲しいんじゃがそうすると遅くなるじゃろ。
 家まで送るのもええが、そっちの方が楽じゃし」
「うん。いいよ」
「そか。ありがと」

決意を込めたハルの声。
こんな声は本気な証拠だ。
何の用事があるのだろうか。



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