02


人は色々な物を求める。
その為に犠牲は払は払わなければならない。
ギブアンドテイク。
つまりそういう事だ。
逆に求めなければ何も支払わなくてもいい。
その代わり希望も夢も持たない事になるけれど。
しかしいくら無欲な人であっても何かは求めてしまう。
少なくても生きる為には。
なら強欲な方が、己を奮い立たせられる。
それに無欲と言う聖人君子みたいな人は信じていない。
あれば偽っているだけで、うさんくさいだけだ。
だから私はどちらかと言えば強欲な人のほうが好感を持てる。
私の知る限り一番そういう意味で強欲なのは赤也だ。
何を犠牲にしても、傷つけても己の求める物を追求する。
だからエースとなりうる資格を持っている。
ハルはそう言うのには逆に表立って強欲になるタイプではない。
虎視眈々と隙を時にこっそり作りながらつく。
……訂正。
欲と言うとドロドロとした物を想像してしまう。
部活に打ち込んでいる爽やか?な青春をしている
彼らの為にも言い直そう。向上心、とでも。

赤也は真っ直だからよくハルに弄ばれる。
試合も目が充血しない程度にいらつかせてミスを連発させる。
中途半端ないらつきはなんとも赤也にとっては嫌な物だ。
それが蓄積した結果だろう。

「ヒャーヒャッヒャッヒャ!!」

赤也が突如デビル化した。
うろ覚えな原作で名古屋聖徳の前にも一回あったとか言っていた。
それはハルか弦兄かなー、なんて思ってたけれどハルの方か。
ハルは今の所上手くボールの勢いをいなしている。
頭に血が上り切っているせいか逆に動きを読まれている。

「流石、詐欺師という所だな」
「止めなくていいんですか?蓮二先輩」
「仁王なら問題ないだろう」
「悪魔でも騙せると言う所かな」
「なんだ精市、来ていたのか」
「うん、リハビリの為にね」

ニコニコといつの間にか現れた精市先輩。
退院したばっかりで学校は来週からだけ。
ちょくちょく様子を見に来ている。
精市先輩が来たからか皆も集まってきた。

「そろそろ赤也を止めないとね。舞、頼める?」
「はい」

隣にあったバケツを手にとった。
赤也がボールを打つ為にジャンプしたタイミングを見計らってバケツの中の水をぶっかける。
ハルは私がコートに入ったのに気づいてきるから私がいない所にボールを打ち返した。
赤也は不意に水をかけられて冷静さを取り戻したみたいだ。

「全国前に選手に怪我させてどうするのさ」
「仁王先輩のテニスプレイってイライラするんだよ」
「赤也は単純だからの」
「二人共、クールダウンしてきなよ。そしたら休憩ね」

コート十周、と告げてバケツを持ち直して先輩方の元に戻る。

「扱いなれてるよな、舞って」
「そうですか?ジャッカル先輩程にブン太先輩を制御できませんよ」
「おい」
「すいません、ブン太先輩」
「赤也は来年部長になるし、赤也を扱える奴が部活に居るだけで安心して引退できるよね」
「確かにな」

引退か……。
勝っても負けてもこの夏が終われば先輩達は引退する。
なんとなく実感がわかない。
夏が終わったら赤也が部長になる。
大丈夫なのだろうか。
遅刻する部長って……。
そしてそのしわ寄せはきっと私なんだろうなーと手にとるように解る。
別に身内の為にフォローとか手伝いをするのはやぶさかではないけど。

「まぁ、ちょくちょく顔を出す事になるだろうな。
 赤也がきちんと部長の仕事を全うしているか見にいかねばなるまい」
「そうですね。切原君がきちんと勤められているか不安です」
「信用ないねー、赤也」

走り終えた赤也が先輩達がこんな話をしているせいか近づこうとしない。
ハルに小突かれてしぶしぶこっちに来る。

「……ちゃんとできますよ」

むくれてそっぽを向くもんだからブン太先輩とハルがからかい始めた。
ま、どうにかなるでしょう。



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