06


戻った時はナイスタイミングだった。
丁度弦兄がみんなに制裁を受け終わった所。

「舞、お前も俺を殴れ」
「女の力で殴っても痛くないと思うけど」

私もやるのか。
仕方無いから思いっきり濡れたハンカチを
腫れた頬に叩き付ける。
痛くないだろうけど。

「全くみんな容赦ないんだから。
 腫れが引かなかったらどうするのさ。
 あ、はい」

スポーツドリンクを皆に配る。
それからパワーアングルの重しを一枚ずつ増やす。
皆、不思議そうな顔で私の行動を見ている。

「十分休憩したら走りこみです。
 立海まで三時間もあればつくでしょうからそれで今日は解散。
 いいですか?」

瞬間、みんな顔をひきしめてイエッサー!と答える。
よし良い顔になった。

「うちは良いマネを持ったな」
「私が言わなくても皆、練習するでしょう?蓮二先輩」
「ああ、そうだな」

弦兄から準優勝のトロフィーを奪う。
弦兄にとってこのトロフィーを持つ事は屈辱だろうから。

「舞、すまない」
「いいの。
 でも優勝以外は要らないからって返すとか言い出さないでね」
「む」

返されても困るだろう。

精市先輩の手術は成功したみたいでほっとした。

意識を取り戻した先輩はトロフィーを見て素晴らしい笑顔を皆に振りまく。

「すまない、精市」
「本当だよ。
 俺が復帰したらびしばししごくから覚悟しておいてね」

後ろで赤也が肩を振るわした。
気持ちは解るが。

「無理はしないでくださいね」
「解ってるよ、柳生」
「まずはリハビリからじゃの」
「何、直ぐに復帰するさ」

全国では。
ここにいる全員が思っている事。

その為に私は何だできるだろう。



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