05


会場についた時には既に最終試合。
弦兄と越前君の試合。

「ハル」
「おう、お帰り」
「ただいま」
「幸村君、どんな様子でしたか」
「お互い頑張ろうって言っていました。
 それにしても予想より時間かかってるね」
「全くだぜぃ」

得点版を見ると「知っている」とうりで皆に解らない程度に眉を潜めた。
嫌なぐらい、忠実だ。
ちらりとドリンクを見てみると全部切れている。
本当はあまり良くないけれどしかたない。
スポーツドリンクを買うか。

……あと、ハンカチも濡らしてこないと。

越前君の技が決まったのを横目にそっと皆から離れた。
私がかけるべき言葉なんてないから。
自分達で立ち上がるしかない。



ガコン、とペットボトルが自動販売機から出たのを取る。
これで人数分だな。
この料金は部の方に請求しておこう。

「あ、あんた」

なんと、これはこれは。
青学のレギュラー陣の皆様じゃないか。
声をかけたのは越前君。
軽く頭を下げると彼らも返してくる。
礼儀はいいな。
さすが体育会系。

「あんた、さっき立海の所にいたけど何者?」

そう言ったのは越前君。
最初はまだ立海の存在は彼の中で知らないはずだから。
言わなかったけれど今なら構わないか。

「立海テニス部マネージャーで皇帝である真田弦一郎の一つ下の妹、真田舞です。
 以後、お見知りおきを。青学テニス部の皆さん」

こら、そこ妹だからって老けてないって言わない。
たしか桃城君か。
クセ者の。
弦兄は老けて見えるけど
「老け顔」と「老けてる」はだいぶ違う。
それに弦兄だってちゃんと美形だぞ。
テニプリは美形揃いだからな。

「皇帝の……。
 ああ、真田さん。
 これから慰労会をするんだけれど立海の皆も来ないかい?」

青学の良心の大石さんの折角のさそいだけど
いささか無神経のように思える。
負けた相手と仲良く慰労会?
一度戦った相手はすぐ仲間みたいな感じなのがよく解らない。

「すいませんがこれから練習があるので」
「はぁ!?試合の後にすぐ練習かよ」

別にそんな予定私にもなかったけどどうせ負けた事に納得がいかなくて自主練を始めるだろう。
全国に向けて。

「負けは許されない立海の掟……僕にはよく解らないな」
「解ってもらおうとは思いませんよ、不二さん。
 それにそちらも同じ気持ちじゃないですか?
 部長の手塚さん、でしたよね。
 彼が帰ってくるまでの留守を預かっているんですから」

手塚さんが帰ってくるまで彼らだって同じような決意を一回はしたはずだ。
その思いの出方が違うだけで。

「では。全国では負けませんから」

絶対にね。



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