04


関東大会決勝。
今頃、みんな試合を始めた所だろう。
本来ならばそこにいなければならないけれど皆から預かったからしかたない。
試合は結局一人でやる。
私が出る幕はない。

「精市先輩」

病室の扉を開けるとびっくりされた顔をされた。
当然だろう。
私も会場にいると思っているのだから。
先程、精市先輩のご両親にも会ったけれど似たような反応をされた。
さすが親子。
妹さんは緊張で真っ青になってそんな余裕はなさそうだった。

「舞、なんでお前がここにいるんだ!今は決勝があるだろう!?」
「はい。ですから、来たんです」

バックからジャージを取り出す。
立海のレギュラージャージ。
精市先輩の物だ。
それを精市先輩に手渡す。

「伝言です。
 例え、ここにいなくても心は共にある。
 試合に出なくてもお前と共に戦っている。
 だからお前が戦っている時も俺達は共に戦おう」
「弦一郎、か」
「要するに頑張れって事です。
 タイミング的に戦っている今じゃないと言えない台詞ですから」

原作だと言えなかった気持ちだった。
でも私がいるから。

「ありがとう。確かに皆の気持ち、受け取ったよ」
「本当は精市先輩のお見送り、したかったんですけれど。
 信じて私は今直ぐに会場に行きます」
「うん。頑張ろう」
「はい」

病室から踵を返した。



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