02
そんな弦兄との会話を楽しんでいた時。
「今日はこれで終りょ」
何時もの良く通る部活を終了する精市先輩の声がとぎれた。
一瞬、何がおこったか解らなかった。
「精市!?」
弦兄の焦った声で脳が事態の認識を始める。
『精市先輩』
『何?』
『今日、なんか調子悪くなかったですか?』
『そうかな。俺は何も感じなかったけど』
『ええ、記録自体には何ら変化は無いのですが』
『じゃあなんでそう思ったの?』
『いえ、なんとなくですけど』
『近々スランプになるかもね』
『風邪の前触れかもしれませんし、一応体には気を使っておいて下さいね』
『ふふ、解ったよ、マネージャーさん』
こんな会話を数日前にした事を思い出す。
でも、嘘だと思いたい。
前世の記憶で彼がああなったのは駅。
それも皆がいる瞬間。
ここは学校のテニスコート。
違う。違う。全然違う。
何故。何故違う。
それは異端があるから?
それは、私?
精市先輩が倒れた。
「誰か!救急車を呼ばんか!」
頭の中は真っ白だけれどもそれでも体は動き出す。
近くにある自分の携帯電話で救急車を呼ぶ。
「弦兄!救急車、呼んだ!
蓮二先輩、保険医を呼びに行って下さい!」
「あ、ああ」
驚きで固まってる皆の中で回復が早かった蓮二先輩に声をかける。
それから柳生先輩に精市先輩の家族に連絡をお願いする。
「赤也、大丈夫、大丈夫だから」
中でも一番真っ青な赤也の手を握る。
「しっかりして」
ぎゅうぎゅう痛い位握りしめる赤也。
他から見れば一番冷静に見えるかもしれない。
けど、一番混乱していたのは私かもしれない。
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