04


特別教室棟二階の一番奥。
窓には暗幕がかけられていて中は覗けない。
名目は地学準備室となっているけれど実態は物置。
鍵が開く事なんて年に一度あるかないかどうからしくしかも、でる、という曰くつくで誰も近寄らない。
そこに渡瀬先輩が現れたのは昼休み。
中に入ってきて私の顔を見て驚いている。

「ドア……閉めてくれませんか?」
「う、うん」
「どうぞ、そこに椅子がありますから」

物置にある椅子を引っ張り出してきたのだ。
渡瀬先輩が座るのを見てから自分も向かいの椅子に座る。

「舞ちゃんが呼び出したの?」
「意外ですか」
「ファンクラブの子と思ってたんだけど」
「彼女達はここには近寄りたがりませんよ」
「それで、その、用件は?」
「ご心配ならずとも取って食いはしませんよ。そうですね……取引とでも言いましょうか」
「取引?」
「そうです。渡瀬先輩は今回の一連の事をどうお思いですか?」
「一連の事って」
「貴方がこの学校きて自身の事ですよ」
「マネを止めさせられた事、だよね」
「察しが良くて助かります」

笑顔は普通は安心を与える。
でも使い方によっては不安を煽る。

「迷惑をかけちゃったなって……皆に申し訳なくて」
「今回は私でしたけどそのうちファンクラブからきっと呼び出しがあるでしょうね」
「覚悟はしてる」
「なのにノコノコこんな所に来たんですか?
 勇気がありますね。でもそれに対処しうる何かを渡瀬先輩は持ってないですね。
 それに先輩はどっちかと言えば人がいい人ばっかりです」

精市先輩が特殊なのだ。
ハルは見て見ぬ振りだから別枠扱い。
でも他の人達は違う。
ファンクラブに何かされたら何もしない訳がない。

そうするとまた迷惑がかかりますね?

そう言う意味を込めて言うと敏感に反応する先輩。
善良な人。
頭も悪くない。
でもそれじゃあ、足りなかった。

「逃げてもいいんですよ」
「え?」
「辛いでしょう?迷惑もかけたくないんでしょう?」
「で、も」
「私なら他校にする手を持っています」

揺れてるな。
あと少し。

「取引って言ってたよね舞ちゃんの望みは?」
「そうですね。渡瀬先輩は何をくれますか?」
「え?」
「いえ、別に何も要りませんよ。先輩の気をやませない為に取引って言ってるだけですから」

私の望みは貴方が立海と言う舞台から消える事だから。
その為なら嘘なんて軽くつく。
それにこういった方が好感を持つし変化球になる。

「舞、ちゃん」
「綾菜も心配してます。彼女のツテで氷帝もいけますよ」
「綾菜ちゃんも」
「先輩、私はこのぐらいしかできません。でもできる事はしたいんです」

良い後輩みたいな感じ?キャラじゃないな。
あ、鳥肌。

「先輩」
「……」
「ご両親が許しませんか?」
「あ、えと、親はいいの」
「直ぐには無理ですよね、すいません。
 でも放課後までに決めてもらえませんか?早くしないと呼び出しとかありますし」
「うん。わかった」

とりあえず此処までか。
ここでチャイムがなって私達は準備室を後にした。



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