05


ちょっといじめ過ぎたか、と先輩の顔を見て思う。
馬鹿な人ではないのに抜けてるのだ。
だからこういう所はきちんと言わないといけない。
大きな被害に合う前に。その被害はテニス部に及ぶ。
だから自力で解決しておいて欲しい。
古賀先輩とかは今は役にたたない。
精市先輩が積極的にもならない限り。
精市先輩は彼女の事を嫌ってもないけど好いてもない。
彼の仲間はレギュラー陣の皆だから。
彼女は入ってない。
そして彼女が被害があって直接的に被害を被る仲間もいない。
私の場合はハルの事があるから。
私を助けた当時はまだ会って直ぐだから「気に入った」と言ってもまだ積極的に動くほどでもない。
だから特になにもしなかった。
そこあたり精市先輩はシビアだ。

「休憩時間、終わりますよ」
「あ、うん」

ほっとしたような顔をする先輩。
私の声の調子を戻したからか。

「舞ちゃんは好きな人はいるの?」

純粋な疑問、だろうな。
話題の流れ的にかな?

「いますよ」
「誰?」
「たくさんいます。弦兄に、ハルに……基本的にテニス部の彼らは好きです」
「好きの意味が違うよ」

がっくりとする先輩。
恋愛感情で好きな人、ね。
銀色のしっぽがゆらゆらと揺れている。

「ハル」

小さい声だったがそれでも気づいたみたいでなん?と振り返る。

「好きとか、嫌いとか、そんなの聞かれても判んないよ」

あるのは関心か無関心か。
関心の中に大切な物があるだけ。

ハルはただ、読めない笑みを浮かべるだけ。
そこに憂いが少しだけあるのがよく解らなくて視線をそらした。



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