03


例えば。
知っていて何も知らないふりをする事は悪なのかと思う。
偽善なのかと思う。
世界は自分を中心では動いてないけれど自分を中心に世界考えてしまうのだ。
少なからず。
自分を中心に考える事はエゴではなく当然な事。
だから渡瀬先輩の事は私は見て見ぬふりをしてきた。
面倒事は嫌いだ。
それに優先順位の差と言うものがある。
だからその事を知っているかと聞かれても知らん顔で嘘をつくだろう。
知らない、と。

「あのね、舞ちゃんはファンクラブにお呼出とかされてない?」
「いえ」

部活の休息時間。
そう渡瀬先輩に尋ねられた。
綾菜に言われた事が何かは知らないけどきっとその事関連だろう。

「あの、綾菜ちゃんに聞いたんだけど……」
「私がファンクラブと話を付けた事ですか」
「あ、うん。参考までにどうやったか聞いてもいい?」
「いいですよ」

参考にはならないと思いつつ話をおおまかに話す。
すると、もしタイミングよく会長さんがこなかったらどうするのかと聞かれた。

「刺してましたね」
「えっ!?」
「玩具ですからね、ナイフ。よくできてますかから少し遠くからだと判らないと思います」

ハルのペテン道具だ。
刃の先端までは本物、先端だけはプラスチックで
刺したら柄の中に引っ込む仕組み。
そこにプラスして血糊が出るよう仕組んである。

「……私には無理だね、それ」
「参考にならなくてすいません」

渡瀬先輩が何か言おうと唇が動こうとして弦兄の叱り声で遮られた。
恐らくは、大丈夫、ありがとう、かな?
弦兄は赤也の事を叱っている。
何をしたかまでは蓮二先輩ではないから予測はつかない。
横目で渡瀬先輩を見ると視線の先には弦兄がいて確かに恋をしている顔だった。
恋のきちんとした感情は判らない。
けど、私は恋は何か恋している人に聞くきはない。
ハル云々の精市先輩の台詞で多少は気にしてはいるものの。
恋は人それぞれだと私は思うから、参考にならないと思う。

「私、真田君が好きなんだなぁ」

そう呟いた声に、少し苛ついた。



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