03
真田弦一郎side
一つ下の妹。
名前は舞。
のんびり、マイペースでそれでいて何処か大人びている。
俺より大人じゃないかと思う事さえある。
そんな妹。
しかしそれは長所であり、それについて思う所はない。
俺もしっかりせねばと思うぐらいだ。
始めて舞を見た時は当然、産まれたての赤ん坊。
小さいながらもこの妹を守ると決めたのをよく覚えている。
兄が妹を守るのは至極、普通な考えだろう。
俺の年が離れた兄も似たような事を言っていた。
その為にこっそりと舞の稽古日に剣道や柔道などをお爺様から習っている。
お爺様も守る為に人は強くなるといっていた。
兄妹関係もいいように築けていると思う。
それが俺の大切な妹、舞。
なのに俺は舞が誘拐された時に何もできずにただ唖然としていただけだ。
何の為にお爺様から稽古をしていてもらっていたのだ。
守ると決めたのに。
「舞!!!」
俺の無様で悲痛な叫びが道に響く。
俺はこの日を一生忘れないだろう。
無力で愚かな俺は回らない頭の中で必死に考える。
考えて母さん達にこの事を知らす為に全速力で駆け出した。
絶対に、取り戻す。
そう誓いながら。
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