03
着替えた後に部室に皆を招き入れたらそれぞれ、反応を返す。
「駄目じゃな」
その中で異色の返答がぼそりと、低い声でただししっかりと聞こえた。
「私、似合わない、ハル?」
渡瀬先輩は普通に似合ってるし。
すると私が似合わない事になる。
自分でも似合ってるとはとても思えないけれど。
「我が侭は聞かないからね、仁王」
「幸村」
「大丈夫だよ舞、似合ってるから。渡瀬さんもね。ね、弦一郎」
「む?ああ。似合ってると思うぞ」
渡瀬先輩がそれで赤くなった。
若いっていいなー。青春だね。
「あ、あああありがとう」
「何故そんなにどもるのだ?」
「弦一郎は鈍感だからしかたない」
「フフ、弦一郎だしね」
「真田だあから仕方ないだろぃ。な、ジャッカル」
「真田は奥手だしな」
「渡瀬さんも大変ですよね」
「皆で何を言っている!」
「弦兄はそのままでいいと思うよ」
皆のからかわれ役だし。
別に恋路応援してるわけじゃないけど。
この事でからかわれるのは仕方無い事だと思う。
あ、でもジャッカル先輩は別か。
「客は全員テニス部がかっさらってくからね!そのつもりで取り組む事!」
「イエッサー!」
全員のかけ声がそろった。
「って言ってたのにいいの、さぼって」
「今は俺の当番じゃないナリ」
文化祭でも屋上でさぼるハル。
ハルってお祭り事はあまり好きじゃないって言うか人ごみが嫌いなんだよね。
「のぉ」
「何?」
「呼んでみただけ」
「何それ」
「ちゃんと舞から返事が来るか確かめたかっただけナリ」
「意味解んない」
「解んなくてええよ」
本当に意味解んない。
でも、ま。
穏やかな顔をしてるからいいか。
「床、固いぜよ」
「床だし」
「膝枕して」
して、なん言ってるそばから私を座らせて頭を乗っける。
「後で足しびれる」
「したらおんぶしてやる」
「いらない」
「んじゃあ、俺が膝枕しちゃる」
「野郎の膝枕なんて嫌だよ」
そんな会話をしながらハルの髪を梳く。
銀色の髪は痛みなんか全くなく私の手から零れ落ちる。
「舞」
「また呼んだだけとか言わないでよ」
「言わんよ。幸せじゃな」
「……そう」
あの時と同じ言葉だ。
「今度こそ、続けばいいの」
「うん」
「嫌、続けさせる、じゃな」
「頑張れ」
「協力してくれないんか。まー君は悲しいぜよ」
「まー君ってガラでもないくせに」
「プリッ」
うん、でもそうなるといい。
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