おひとりさまマロングラッセ | ナノ


6 おひとりさまマロングラッセ
 


 
 
 百均で某コミック用ペンのパクリみたいなのがあったので面白半分に買ってみようと手に取る。こういうのも使いこなすのがプロというもの。弘法筆を選ばず、である。上手く描けたらインスタにあげよう。
 レジに並んでいて、剥き甘栗と目が合った。ふむ。


 耐熱皿にスプーンで砂糖二杯、水一杯、百均で買った甘栗を入れて電子レンジで三分ほど。甘栗をひっくり返してさらに三十秒。熱いうちにラム酒をかけて、一晩置いておく。

 本当は一晩なんて待たずにすぐ食べたい。こういうのは食べたいときに作ってすぐ食べたいのだ。というわけで。

「半分だけ食べよう」

 明日になればもっとラムが浸みて美味しいだろうけれど、これはこれでおいしい。

 一時期、いろいろラム酒に漬けるのにハマったことがあった。甘納豆や干し柿とか美味。あと氷砂糖。これはラムキャンディスといって、溶けたあとにアイスにかけたりコーヒーに入れたりするとオトナの味。

『味と匂いが絵に描けないのが残念』
『人って聴覚から順に視覚・触覚・味覚・嗅覚って忘れていくんだって』
『へえ。味と匂いは最後の二つなんだね』
『描けなくてもなかなか忘れないってこと』
『そっか』

 でも、いまだに声も忘れていない。









 



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