おひとりさまバナナプリン | ナノ


5 おひとりさまバナナプリン
 


 
 

「ただいま――と言っても誰もいないし」

 ほんとひとりごと多くて我ながら怖い。

 ミニキッチンを通り過ぎようとしてレンジの上のバナナに気づく。あらら。
「バナナにシュガースポットが出ちゃってるな」
 黒い点々を見ながらひょいと持ちあげるとぽろりと先から取れてしまった。これは早急にどうにかしなければ。

「バナナプリンでも作るか」

 バッグを置いて手を洗って冷蔵庫から牛乳を取り出す。
 バナナを輪切りにして耐熱容器に入れ加熱する。それをフォークで潰して牛乳100mlを少しずつ混ぜていく。バナナをしっかり加熱するのがポイント。根性で滑らかにしたら器に分け入れて冷やす。そうするとあら不思議、固まるのである。バナナのなんちゃらいう成分と牛乳のカルシウムが化学反応するかららしい。


『お、そばかすできてる』
『うそ、気をつけてるのに』
『このバナナのことを言ったんだよ』
『でもこっちの顔見て言った』
『シュガースポットができてるってことは甘くて食べごろなんだよね』
『何かやらしい』
『だからバナナのことをだって』


 数時間後、冷蔵庫から取り出してみたら、プリンは固まっていなかった。

「……へへ、失敗しちゃった」

 これはこれでおいしいけどね。






 



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