7 おひとりさまアップルパイ 『何?これ』 『ウサギ』 『え』 『ほら耳が長くて、足が四本あって』 『耳みたいなのが長くて足みたいなのが四本生えてる新種の生物か宇宙人かと思った』 『…自分ちょっと絵が上手いからって』 一応プロのイラストレーターをつかまえて“ちょっと絵が上手い”とは。 『ウサギはハードル高いよ。りんごとかどう?』 『りんご』 『丸描いて、棒刺して、葉っぱクルッ』 『丸描いて、棒刺して、葉っぱクルッ』 『上手い上手い』 『バカにしてる?』 アップルパイ食べたいな。 でも外は雨だし、部屋着から着替えるのも面倒くさい。 餃子の皮の残りがあったはず。一人で餃子焼くにはあれ、三十枚入りは多いと思う。余分に作っておいて冷凍しておけばいいんだろうけど、出来たそばから焼いて食べたい、余分に作ってる時間も惜しいときとか、あるじゃない? 餃子の皮の中央にりんごジャムを乗せる。シナモンパウダーを振って、今日はレーズンも混ぜよう。 端に水を塗り半分に折ってくっつける。フォークで抑えて縁飾りをつける。 あとはトースターで5分から10分ほど、焼き色を見ながら焼くだけ。 「うん、これはこれでおいひい」 あのときの宇宙人とりんごの描かれたレシートは今も財布に入っている。 [prev][contents][next] ×
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