1 おひとりさまクッキー 甘いものが欲しいけれど何もないときに、ひとりぶんのクッキーを焼くときがある。 ビニール袋に大きめのスプーンで砂糖一杯と、マーガリン一杯、あと小麦粉を三杯ほど入れ、もみもみもみ。 まとまったらビニールから出していくつかに分けて、丸め潰しアルミ箔の上に並べてトースターで三分から五分ぐらい焼く。焦げそうならホイルを被せる。 「いっぱい焼くと全部食べちゃうからねえ」 誰に言うでもなく呟く。やばいな、一人暮らし始めてから独り言が増えたわ。 苦笑しつつ、焼いている間にコーヒーを入れる。時間は無駄にしないのだ。 ごくたまに気がむくと、生地を型抜きするときもある。唯一、いや二つある型はアルファベットのYとA。私と……私と、もう一人の頭文字だ。 あの頃はこの型で抜いていた。量も四倍ぐらいだった。甘すぎる、というから、砂糖を減らして代わりに粉チーズを入れたらそれを気に入ってアルコールのおつまみにしていたっけ。 あれから粉チーズ入りは作っていない。すごく美味しかったけど、作るとどうしても思い出してしまうから。 不思議だ。物よりも、味や匂いの方がより強く、濃く、鮮やかに思い出させる。 今頃どうしているだろうか、遠く離れた東京で。 もっとめんどくさいとマシュマロを切って並べて焼くだけのメレンゲクッキーを作ります 120〜130℃で45〜50分ぐらい [contents][next] ×
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