track14: 14の春 『マイムジ 英斗 熱愛発覚! お相手は主題歌を担当したドラマに出ていたアノ女優』 週刊誌を見てため息をつく。 この記事は事実である。事前に事務所に連絡が来てたし、英斗も認めてたから。 「あー、まあ、マイムジにとって悪いようにはしないから。適切な関係で良好に対処しているつもり。これから先どうなるかはわからないけど、バッシングされるような付き合い方はしないよ」 確かに、仕事にはいつも通りちゃんと取り組んでるし恋人ができたからといって英斗は何も変わらない。ただ。みんなでいるときに、たまに英斗だけいないときが増えただけ。それだけ。何も、影響ない。 「……」 私、いつまでこんななんだろう。 いつから好きかなんてわからない。少女の頃(今も少女だろうけど)から一緒にいて、お兄ちゃんのようでいて、でも違う、そんな英斗と近くで過ごしてきて、揶揄うその性格とかでも実はめちゃくちゃ優しいとこやもちろん音楽に対する才能だとか、もう何もかも、腹立つところとか全てひっくるめて、もう、私は……。 けれど私は実際まだまだ未成年で子供でどうにもならない。だから気持ちをぶつけようとしたことも、ない。宙ぶらりん。 中学3年にあがった春には英斗に「高校どーすんだ」と聞かれ「もちろん進学する」と答えた。 あのときは軽く考えてた。英斗もフリーだった(はず)だし。 でももうなんか、違う。今の私は。 英斗に彼女ができるたびにぐらんぐらんするの? スパンは意外に短いから気づくと別れてたりするけど、けれどいずれちゃんと本格的に付き合う人も出てくるだろうし、私にはそこまではピンとこないけど結婚を考える人だって出てくるだろう。 そうしたら私は? 今までのように楽しく、笑顔で、ピアノを弾けるの? 歌を歌えるの? ぐるぐるうずまく胸のもやもやをどうにかしたい。全て捨てたい。捨てたい。 高校受験を控えて、将来を違う方向に考えてみてもいいんじゃないかな……? だから、私は夏が来る前、みんなに言ったのだ。 「高校受験に集中したい。春まで、お休みください」 * * * 「ミュウ、何かあった? ていうかあったけど。どした? お兄ちゃんに相談しろよ」 自宅で兄が声をかけてきた。 言ってないけどわかってる。それが兄。ていうか、みんなわかってるよね。それでいてスルーしてる。大人ってすごいな。いや私のこと子供って思ってるからか。 「別に。ただ、将来の可能性をいろいろ考えてみようと思って。普通の中3ならみんなそうでしょ」 これは本当のこと。だからほっといて。 「ま、そうだな……。でもさ、でも、どうしてもってときはお兄ちゃんに相談しろよ?」 たぶん、しない。 ごめん。 高校受験といっても、実は大体あたりは付けていた。都内で芸能活動がやりやすい学校である。 普通科の高校も考えたけど、やはり普通に過ごすのは難しいだろうから。 と、考えている時点でやはり私はマイムジを辞める気はないのか。 幸い成績は良好なため、両親や先生と話し合った結果、推薦が取れることになった。面接に行けばほぼほぼオッケー。ほぼ合格。 終わっちゃったよ、高校受験……。 でもまだ私の中のもやもやは晴れていない。まだマイムジには戻れない。 そんなときだった。eimiさんが声をかけてきたのは。 「ミュウミュウ。私と一緒にちょっとバンド組まない?」 2019.11.22 [prev][contents][next] ×
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