グランマさんとあの子とおれと Story ひとりでいる転校生のあの子。ある日あの子に連れていかれた先には… ツイノベ連作です。 @その子は3学期のはじめに転校してきた。青白いはだに茶色いかみ、うすい目のいろ。キンチョーからか無表情。最初は興味しんしんだったクラスメイトたちもだんだんと「人形みたい」と遠まきに見るようになった。 自分もそうだ。男だし。あっち女子だし。 いつもひとり静かに本を読んでいた、あの子。 A「いってえ…」 公園からの帰り道で自転車ごとコケた。 そこを通りかかったのは、れいの転校生。その子は血の出たおれのひざを見て「わたしのグランマの家がすぐそこだから」と自転車を起こした。 「グランマ?」 そうして連れてかれた先には、 「OH…ダイジョーブ?」 キンパツのばあさんがいた。 Bこのキンパツのばあさんはこの子のお母さんのお母さん、つまり本当のおばあさんだった。だからこの子のはだは白くてかみは茶色なのだ。 傷を消毒してばんそうこうをはってもらって、どうぞと出された『グランマ』の手作りスッコーンはめっちゃおいしくて。 「マタキテネ」 もちろん真に受けた。 C「また来たの…」 だってグランマさん、また来てねって言ったし、グランマさんのおかしおいしかったしおかしめっちゃおいしかったし! 遊びに行ってるうちにいろいろわかった。グランマさんはイギリス人でおじいさんとお父さんは日本人。両親が働いているからよくグランマさんの家に行っていること。 D「今日グランマさんの家に行っていいか?」 教室で話しかけたらいやな顔をされた。だっていきなり来るなって言ったじゃん。だから聞いたのに。 クラスでもさわがしいほうのおれが大きい声でいろいろ話しかけてたから、その子の個人情報はみんなにだだもれした。みんなもそのうち話に加わってきた。 E「OH!タクサンオトモダチ、イラッシャイ!」 みんなキンパツのばあさんにびっくり。 「この人グランマさん!おかしめちゃうまだぞ!」 「なんであなたがしょうかいするの…」 みんなでたくさんスッコーンを食べた。 あの子もたくさん話して、わらっていた。 グランマさんはそれをにこにこ見ていた。 F3学期が終わるころ、あの子がまた転校することがわかった。 「お父さんの仕事の都合でイギリスに行くの」 「グランマさんも!?」と聞くと、 「グランマは行かないよ。安心していいよ」とふき出した。 「わたしがいなくても遊びに行ってあげてね」 そう笑うけど、ついそう言っちゃったけど、でも。 G最後の日。クラスでお別れ会もやったけど、おれはグランマさんの家までついていった。 「短かったけどあなたのおかげで楽しかった。本当にありがとう。あとね、ずっと言いたかったんだけど…」 言いにくそうにもじもじしている。なんだかドキドキしていると 「スッコーンじゃなくてスコーンだから」 Hそんな感じの俺の初恋の話だったわけだが(そう、これは実は初恋の話だったのだ!)、そんな俺ももうじき一児の父になる。 「この子が生まれて大人になって結婚して孫が生まれたら」 「なにいきなりそこまで飛んでるの」 「俺、孫に『グランパ』って呼ばせたい」 隣でグランマさんの孫が噴き出した。終 ×
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