妖精さんの声 中1の冬、父親が再婚したいと言った人には、小さい女の子がいた。 これが同年代なら微妙だったろうが、8歳も離れたこの小さな妹を僕は歓迎した。 がしかし。 話さないんだこれが。 話しかけても首を縦か横に振るか、(新)母さんの陰に走る。 頭をなでようとするとするっと避ける。 イラッとしたところで父が言った。 「この子は妖精さんだからな。姿は見れてもそんなすんなり声が聞けたり触れたりするとは思うなよ。妖精ってそういうもんなんだぞ?」 んなバカな。 そう思ったけど、「俺だって2年かかったんだ」とその小さな頭をなでる父に妹はこっちには聞き取れない小さな声で何かを囁いて、父はそれに「そうか、ありがとな」と答えていた。笑った妹はかわいらしくて確かに妖精のようで。 「お前のこと嫌いじゃないって。よかったな」 うん、まあよかった。 よかったけど、俺もききたいよ、妖精さんの声! * それからはなるべく焦らず、同じ空間で、一緒に食事して、テレビをみて、徐々に、徐々に、妖精さんとの距離を近づける日々。 そしてある日。 「いってらっしゃいおにいちゃん……」 僕は玄関で涙を零してしまった。 (それは、重度のシスコンの誕生の瞬間でもあった……) このあと禁断の義兄妹ものになるのか、シスコン兄と悪い虫(出てきてないけど)が戦うラブコメになるのか決めかねてます 2016.12.23 [prev][contents][next] ×
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