ボーイフレンド(偽) 諦めてくれなくてつい言っちゃったの、彼がいるって。 そう彼女から相談されたのはいつだったか。同じクラスで割に仲が良くて。だから偽物の彼氏役を引き受けた。 彼女に恋する男はストーカーのように俺たちの傍をうろちょろして、カレカノとしておかしいと思うとすぐ指摘してくる。 「付き合ってるのに手も繋がないなんておかしい」 学校の行き帰りで手を繋ぐ。 「キスもしないわけ?」 頬にキスを強要された。さすがにそれ以上はナシ。 「一緒の大学に進学しないの?」 必死こいて勉強して同じ大学へ行った。 「旅行とか行かないの? なんならアリバイ作るけど」 「ちゃんと親御さんに面通しとかしてんの?」 「いいとこ就職しないと幸せにできないんじゃない? 君ほんとに彼女のこと真剣に考えてる?」 そして現在。教会のチャペルにて、タキシード姿の俺とウェディングドレス姿の彼女。 礼服を着た奴がほっと息をつく。 「はー、彼女の幸せも見届けたし、僕もそろそろ身を固めようかな」 「は!?」 奴はとっくに他の女性と付き合っていたというではないか。 「確かに昔は好きだったけど、今は純粋に彼女のファンだからね。彼女が幸せになるようお前のケツを叩いてただけだよ」 お見事。 [prev][contents][next] ×
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