頭のいい女 | ナノ


頭のいい女
 


「頭のいい女ってちょっと苦手だな」

 入学してすぐ行われたスポーツ大会での活躍を見て、密かに憧れていた彼。その彼がそう言ったのをたまたま傍で聞いて、私は真っ青になった。
 自分で言うが私は頭がいいのだ。もっと進学校にもいけたのだが諸々の家庭の事情で家から近いこの学校(でもそこそこのレベルではある)に入学したわけで。
 2年に進級して同じクラスになったというのに、これではすぐにそれがバレてしまうではないか。
 これは隠すしかない! でもどうやって?

 テストを白紙で出す。怒られて追試でつい満点を取ってしまった。
 模試で偽名を書く。トップクラスだったけれどやはり怒られた。
 授業中当てられて黒板で適当な公式を書いた。結果として新しい解き方を発見した。

 ああああ空回り。

 なのに、あるとき彼が私を呼び出して、
「オレと付き合ってくれない?」

 意味がわからない。はっ! てことは私はもしや頭が悪いのかも!? 実は!? だから!?

「いや、だからオレ頭のいい女がちょっと苦手なの。お前違うじゃん。お前勉強できるけど頭おかしいじゃん。なんか可愛いし退屈しないんだよ」

 やっぱり意味がわからない。




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