k&d花花 | ナノ


96 キッチン&ダイニング花花
 


「穴場の店があるんだよ」

 最初は大学の友人に連れていかれた店だった。
 学生の多い街の、百貨店やファッションビルの並ぶ表通りから2本ほど入った裏通り、輸入食品店や雑貨屋などと並んだ中の一店舗、「キッチン&ダイニング花花」である。


「ハッピーハロウィーン!」
「うわっ」

 小さい店で自分らを出迎えた女性店員は頭部にでっかいカボチャを被っていた。ぐらぐらしてる。

 そのまま注文を取りに来たカボチャ店員に友人が話しかける。
「店長、それ苦しくないですか?」
「え? 何? お菓子くれなきゃイタズラするぞー!」
「会話できないじゃないですか」

 店長? バイトじゃないのか、若そうだけど(顔は見えないが)。
 瞬間、視界が悪いのか彼女がよろめいて、頭が傾いた拍子に外れたカボチャが見事俺の頭にヒットした。

「わあ、ごめんなさい!」

 見上げた先の彼女の素顔から、俺は目が離せなかった。


 ──ま、つまり、一目惚れだったわけですよ……。



 その日、店でたった一人のバイト(女子)が就職関係で近いうち辞めると聞いた俺はチャンスだとばかり無理やりその後釜に納まることに成功した。俺もいずれ就活も入るが、それはそのとき考える。

 この人の近くにいってみたかったのだ。




 

(afterword)
こんなかんじで始まりました


2014.10.16



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