転校生トライアングル 85-86 東京代表G&B の後日談 日米ハーフの彼が転校してきて1ヶ月弱。 すっかり一般人の私と彼が、それぞれ委員会を終えたあとにばったり昇降口で会って、途中まで一緒に帰ろうかと言っているところに、例の転校生がやってきた。 「お、マイケル」 彼が転校生に声をかけた。ちなみに転校生の名前はマイケルではない。 声をかけられた転校生は、若干青みがかった瞳を薄くして不満げにこっちを見た。 「あのさ、俺確かにアメリカの血入ってるけど、マイケルって名前じゃないから。なんでみんなマイケルって呼ぶわけ?」 そう、彼はなぜかマイケルと呼ばれている。ちゃんと日本名があるにもかかわらず。 なぜかって? アメリカ人ときたら「マイケル(・ジャクソン)」だから、かな? 多分そうだ。 「まあいいじゃん。みんな珍しいんだよ転校生が」 彼が笑って言う。 「珍しいもなにも、聞いたけど二人だって転校生なんだろ? 東京からの」 「そうだけど、アメリカからの転校生のおかげで一気に存在が希薄になった」 「私、東京からって言っても西の方のど田舎から来たし。こっちの方がまだ都会だよ」 「え!」 マイケルがなぜか私の一言に食いついた。 「そうなんだ!? 俺もなんだよ! アメリカっつったって、オハイオ州ってとこでこことそんなに変わらない程度の町だぜ? しかも1年しかいなかったしその前はずっと厚木(※神奈川県)に住んでたんだからとーぜん英語なんか喋れないし、何回もそう言ってるのにみんなに通じないんだよ……」 だんだんと声に勢いがなくなってきた。 「みんな見た目と肩書きで判断するからなあ……。マイケル見た目結構向こう寄りだし」 彼もちょっと同情的。少し前までは同じ目にあってたからね。まあ彼は普通に東京の都会っ子だったけど。 「別にいいんじゃないの? 必死に真実を語らなくても結構みんな勝手にいいように解釈してくれるよ? で、そのうちまた転校生がくるよ」 私は自分の経験からアドバイス。それにホラここは転校生受入奨励学校だし。いや私が勝手にそう思ってるんだけど。 「アメリカからの転校生よりインパクトあるの、来るかなあ……」 彼が言って、マイケルがまたちょっと眉をしかめる。 なので、顎に拳を当てながら 「そうだねえ、火星からの転校生とかならきっと……」 と答えたら、男子二人がぽかんと私を見た。 「い、いや、冗談だよ?」 なんとなく恥ずかしくなって慌てて言うと、二人はブーっと噴き出した。 「い、一瞬マジで言ってるかと思った」 彼がひいひい笑いながら言うと、マイケルも 「そ、そうだな、きっと火星からの転校生なら、俺の影も薄れ……」 と続け、暫く二人の笑いは収まらなかった。 それからなんとなく3人でよくツルむようになって、周りからは「転校生トリオ」なんて言われるようになるんだけれど、今度は新たな噂というか、好奇の目で見られるようになった。 『さすが東京の魔性のオンナ、東京のオトコとアメリカのオトコを手玉にとってる』 「ね、ね、ね、どっちが本命なの?」 なんてキラキラした目で聞いてくる女子多数。 私はただの東京の田舎者なんだってば!!(言ってないけど) (afterword) このあと、女1男2の三角関係ラブコメになります(うそ) 今更ですが、彼らは中学生設定です。中2か中3。 厚木市は神奈川県のほぼ真ん中にある市です。都会ではない……ですよね…… えーと、東名高速のインターチェンジがあります。 2014.9.26 [contents] ×
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