86 東京代表ボーイ 私のクラスに真の都会っ子がやってきた。 気さくな彼はあっという間にみんなに囲まれて、毎日ワイワイ、質問責めにもきちんと答える。ゲーノー人見たことある? シブヤって本当にあんなに人いるの? ……うん、私も聞きたい。 そんなTOKYOフィーバーの中、あるとき放課後の教室で彼が一人でため息をついてるところを見てしまった。何となく声をかける。 「どしたの?」 「……俺、君みたく最初からクールにしてればよかった」 「え?」 「東京ってそんなにすごいと思う?」 「思わない」 私の住んでたとこはだけど。 「だよね。別に俺がすごいわけでもないし」 なんか疲れちった、とこぼす彼につい言ってしまった。 「私も、本当の都会っ子じゃないし」 「え?」 もういいやと事情を話す。 「ボロが出る前にみんなの関心がそっちに向かって助かっちゃった。何かお礼しなきゃね」 へへっと笑った私に彼も笑って、じゃあたまにこうやって俺とゆっくり話してよ、と言った。 ──1ヶ月後。なんと、アメリカからの転校生がやってきた。何ここ。転校生受入奨励学校とかなの? 日米ハーフの彼はそれはもう段違いに扱われ、私と彼は一気にその他大勢になった。 二人で顔を見合わせて、笑った。 [prev][contents][next] ×
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