ねむり王子オマケ 「……えーこのようなおめでたい席にお招きいただいたこと、たいへん嬉しく思っております。ご年長の方をさしおいてはなはだ僭越ではございますが、ご指名により、お祝いを述べさせていただきます。どうぞおふたりはお座りください」 「(……ちょっと。ちょっと!)」 「(…………。はっ!!)」 「(なんで主賓スピーチで寝られるのよあなたは!)」 「(いや寝てない寝てない目を閉じてただけ)」 「(ぜ っ た い ね て た)」 「(ねえ瞼に目、描いてくれない?かなり本気)」 「今この高砂でできると思う?太腿にフォークを突き刺してでも起きてて。せめて主賓スピーチだけは」 「(声デカい)」 「──彼は普段は寡黙なタイプで、黙々とひとりで仕事をこなし、時々いるのかどうかわからないほど気配を感じさせないこともあるのですが、いざ本番となると別人のようになり、軽妙でもありながらかつ真摯、誠実なトークによりお客様の信頼をしっかりと得る大変頼もしい人材で……」 「(絶対寝てるだけでしょ……。それを慌てて取り返してるんでしょ……)」 「(言うな……)」 「──最後になりましたが、ご両家の皆様と本日ご参列の皆様のご健康をお祈りいたしまして、挨拶の言葉と代えさせて頂きます。本日は、まことにおめでとうございました」 「…………」 (ドカッ!!) 「はっっ!!」 「(新郎寝てなかった?)」 「(寝てた)」 「(寝てた)」 「(完全寝てた)」 2014.9.8 [prev][contents] ×
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