好きな人に会ってほしい。
　ダメンズホイホイの従妹に頼まれて、出向いた居酒屋で顔を合わせた男は高校時代の元カレだった。

　白々しい挨拶をして乾杯する。ザルの従妹は酔っ払ったフリをして彼に寄りかかる。アホらし。はいはい彼なら大丈夫だよ保証するよ私帰っていいかな。

　従妹がトイレで席を外したとき、彼がおもむろに言った。
「あの……久しぶりだね」
「そうだね。いつから付き合ってんの？」
「は？　別に付き合ってないけど」
「え？」
「確かに告白はされたけど、今日だってよくわからない理由で呼び出されただけだし」
　言われてみれば、確かに『好きな人』に会ってほしい、と言われたのだった。
「付き合わないの？　あの子思い込みは激しいけど可愛いし一途でいい子だよ」
「まあちょっと揺れたけど……でも今日気が変わった」
「は？」
「大学進学でうやむやになったけど、これといった理由で別れたわけじゃなかっただろ」
「理由も何も2年付き合って手も出されなきゃ、不安になるでしょうが」
「大事にしてたんだよ！」
「そんなの言われなきゃわからない！」
「伝わってると思ってたんだ！」
「わかるか！」


　気づいたら横に従妹が立っていて、ひとこと言った。
「私帰っていいかな」






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