撃ちぬいたのは彼か彼女か | ナノ


69 撃ちぬいたのは彼か彼女か
 


 うちの部署の若手は大変仲が良い。
 残業上がりに居酒屋1時間1本勝負!や、ゲームセンターでホラーガンシューティングゲーム大会なんてしょっちゅうだ。

 この日はゲーセン。

「先輩、俺と組んでくださいよ。今日こそ最終ステージいきましょう」
 そう言ってきたのは2期後輩。
「いいけど、小銭の上限決めとこう。この間つぎ込み過ぎた」
 了解です、と彼は千円札を両替しに行く。

 二人で画面の前で銃を構える。気分はホラーアクション映画の主人公だ。
「いくよ」
 次々現れるゾンビを倒していく。やり慣れたステージはその都度のボスに多少手こずるものの難なくクリア。途中のステージでやはりこと切れて、小銭を投入してライフを得る。
 そして、遂に未踏のラストステージに辿り着いた。

「先輩」
 場面が切り替わる前に後輩が言った。
「もしこれクリアしたら、俺と付き合ってください」
「え」
「先輩っ、画面見て! 援射してください!」

***

 ──結果、あと少しのところでDEAD END。
「……」
 しょぼくれた子犬を見て、私は新たに小銭を投入した。
「先輩?」


「もし今度クリアしたら、私と付き合ってくれる?」


 子犬が一気に猛犬の目に変わった。


(after word)
なんだか『あらすじ100ものがたり』というより『なれそめ100ものがたり』といった方がいい気がしてきました……


2014.7.28



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