A lovery little bird | ナノ


A lovely little bird


10月も下旬。今日もピアノのおけいこだ。
先月実習も終わってバイエルバイエルの日々が戻ってきている。
練習の合間、いわゆる私の休憩時に五十嵐くんがピアノを弾いたりするのだけれど
最近とある曲をよく弾くのだ、とっても簡単そうな、かわいい曲を。

「そのなんかかわいい曲、最近よく弾くね。バイエルに入ってる?」
「あ、いや、これはツェルニー」
「ツェルニーっていう曲なの? へえ、私でも弾けそうな気がする」
「いや、ツェルニーは……。いや何でもない。うん、弾けるんじゃないかな」


***


学食で、フーンフンフーンフンとすっかり覚えてしまった例の曲を口ずさんでいたら
アユが、「……その曲、どしたの。なんで知ってるの?」と聞いてきた。
「え、やっぱアユも知ってる? 五十嵐くんがよく弾いてるから。覚えちゃった」
「へえ……」
アユがにやりと笑う。なに。気持ち悪い。
「それ、なんて曲か知ってるの」
「えーと、チェ、じゃない、そうそうツェルニー。ツェルニーって曲でしょ?
 そういえばツェルニーってどういう意味なんだろ」
「おバカ。ツェルニーは作曲家の名前」
「え、そうなの?」
「その曲のタイトルはね……、いや、いいわ」
「なに、教えてよ」
「ちょっとど忘れ。来週師匠に聞きなよ。教えてくれるといいね」
「えー、なにー」
アユはにやにやと「ほら今日カレーにするんでしょ。早く取ってきな」と私を追いやった。



(で、なんていう曲なの? アユちゃん)
(あれ『かわいい小鳥』って曲なんだよねー。師匠ベタ過ぎるプププ)






(after word)
ほんとにある曲です



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