60 変わらぬサイン 「……は、じめまして」 久々の合コンの席で、目の前には元彼。 バイトが一緒だった2歳年上の彼、初めての恋だった。夢中になって一人暮らしの部屋で二人で籠って大学もサボりまくりの怠惰な生活。 しかしそんな生活は最終的に親にバレ、実家に連れ戻されたことで終わる。バイトも辞めさせられ、2時間かけて実家から大学に通い、生活をぴっちり監視される日々。彼とは月に一度だけ会うのを許されたが、そんなのでもう続くはずがない。最終的に自然消滅だった。 乾杯して食事が出てきて時間も過ぎると、私の向い側の男性が、その隣に座る彼の背中を叩いて言った。 「こいつ学生時代に親に引き離されたとかいう彼女が忘れられなくてさ、今日やっと連れてきたんだよ」 彼と私が同時に咽る。 彼を見ると、目があった。 「──あのときは俺が全然駄目だったから。でも今は少しはマシになったと思う」 彼はじっと私を見つめてる。 私は箸袋の先を少し折ってその中に箸を収めると「ちょっとごめん」と席を立った。 そのままこっそり店を出る。会費は前払いだし問題ない。 これは昔の私と彼の合図。「途中で抜けるよ」っていう。憶えているだろうか。 果たして、背後から走ってくる靴音が響いた。 (after word) 一応七夕のお話(仕事サボりすぎて引き離された織女と牽牛)をもじってたりします 2014.7.7 [prev][contents][next] ×
|