57 竹刀は踊る 春とは名ばかりの炎天下の中、私は道着、袴、垂・銅・面・小手をつけ竹刀を持って裸足で走っていた。ただ今部活対抗リレーの真っ最中である。 袴は走りにくいし面で視界は悪い。既に周回遅れの断トツビリ。毎年のことだけど。もう剣道部なんて入んなきゃよかった! 暑い。もうわけわかめ。ああ、テイクオーバーにいるのは陸部の彼ではないか。アンカーか。めっちゃ速いんだよね。去年の最後の選抜リレーではごぼう抜きで格好よかった…… 「ハイッ」 「えっ」 気付いたら私は第3走者にもかかわらず竹刀(バトン)を陸部の第5走者(アンカー)である彼に渡していた。 ポカンとする彼、と私。けれど次の瞬間、彼はニッと笑うと竹刀を握り走り出した。 その後は……。私を真似てバスケ部にボールを蹴り渡すサッカー部、野球部にラケットを渡し、逆にトランペットを渡されるテニス部など、もうお祭り騒ぎだ。 そして、竹刀を持って颯爽とゴールテープを切る彼。思わず「カッコイイ〜」と言った私の頭を体育祭実行委員が殴った。 その後彼は何故か竹刀を返してくれず、返す条件とか何とかで代休日の月曜に会うことになった。 え? これってデート? ていうか、そこに竹刀を持ってくる気? 2014.6.11 [prev][contents][next] ×
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