5月最後の土曜日。絶好の運動会日和です。
　紅白に分かれた小学生らを眺め、私はビデオカメラを構えた。目標を捉えてピントを合わせる。

　まずは準備体操。しっかりしないと怪我するからね。

　50m走。ピストルで耳をやられそう。

　チェッコリ玉入れ。なにこれ可愛い。玉入れの合間合間に踊ってる。なにこれ可愛い。

　ダンス。流行りのJ-POPにのってキラキラの腕輪をつけて踊る。ズームアップして画面めいっぱい一生懸命踊っている姿を収める。

　うん、大満足。


＊＊＊


「あれ、来てたんだ」

　夜になって、彼がすっかり焼けた顔で部屋に入ってきた。

「おかえり」
「え！　何みてんの」
「今日の運動会」
「げ！　来てたの」
「見てこれ。さすが振付考案者。一番上手かったよ」

　55インチのテレビに目一杯映っているのは、朝礼台の前で全力で踊っている彼。
　もちろん彼の前には、同じく一生懸命踊っている1年生100人がいるわけだけど。

「一体何しに来てんの……」
「ちゃんと来校者カードも下げてたよ。私だって関係者でしょ、勤めてる教師の婚約者なんだから」

　私はもう一度巻き戻して、ダンスを観る。ふふ可愛い。

「来月は学校公開だよね。楽しみ！」
「まさか来る気……？」

　そのまさかです。






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