37 4月1日 side B 俺とあいつは、同じ病院で日を跨いで5分差で生まれた。母親たちはたまたま一緒に産気づいて、一緒に分娩室に入り、若干難産だったあっちにスタッフみんながかかりきり、やっとおぎゃあと声がして「早く! 次こっち!」と母親は叫んだそうだ。 聞いてみれば同じマンション住まいでお互い初めての子、母親たちは何だかんだ気が合って俺たちは一緒に育った。そう3歳の春までは。 なんであいつだけ先に幼稚園に通うのかわからなかった俺はそれはそれはぐずった。幼稚園からあいつが帰ってくるのをひたすら待つ1年。 あいつの年齢が上がれば翌日には俺も上がる。なのに、俺たちの境界線が4月1日だったためにいっつもあいつが先にいってしまう。幼稚園に始まり、小中高と。どうしたって追いつかない。こんなに近いのに決定的に遠い──。社会に出て数年たたなきゃ同じ土俵に立てないのか。 ──なんて思ってたんだけど。 18、いや19の春。スーツを着た俺とワンピースの彼女は同じ門をくぐる。 「狙ったわけじゃないからね。わざと落ちたりなんかするわけないんだから」 ホントかどうかはわからない。でもどっちでもいい。 現役の俺と一浪した彼女は、この春一緒の大学に進学した。 2014.4.1 [prev][contents][next] ×
|