バンド内恋愛 | ナノ


23 バンド内恋愛
 


 高校卒業記念ライブに向けて。
「キーボードが欲しい」
 ベースが言い出した。
「いいけど、男な」
 以前、キーボードの女を巡ってベースとドラムが喧嘩して以来、バンド内恋愛禁止、もしくは女のメンバーを入れない、というのが暗黙の了解になっている。
 そうなると必然的に女のプレイヤーが多いキーボードは入らず、ギター(兼ボーカル=俺)、ベース、ドラムのスリーピースでやっていくことになる。高校内で、男のキーボード奏者を見つけ、そしてバンドにスカウトするのはなかなか難しいのだ。
「女だけど、大丈夫、俺の妹だから。あと絶対お前ら惚れないから。惚れたら俺お前らと友達やめるから」
「なんでそこまで」

 そうしてやってきたのは10歳、小学4年生のチビっこだった。確かにこれには惚れない。
「ヲイ……」
「こいつ4歳からピアノやってるから。マジ巧いから。頼むから最後ぐらいキーボードを加えた曲を演らせてくれ!」

 チビは確かに巧く、結果的にはマスコット的に可愛がられボーカルの俺より目立って客に異常にウケた。なんか複雑だが、まあいい。サラバ高校時代よ!


 ――10年後、チビと付き合いだした俺にベースは冷たい。



(after word)
ベースはサカナクションの曲をやりたかったらしい
私はどうも青年×少女がすきらしい

2014.1.4



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