ハチ | ナノ


ハチ
 



「こんどおとうとがうまれるんだ!」
 ろくがゆった。
「おとうと? いもうとじゃなくて?」
 ななはおんなのこのほうがいいんだけどなあ。

 ななとろくは、いつもようちえんにいっしょにいく。
 うしろからママたちがおしゃべりしながらついてきている。
 ママたちってどうしてあんなによくしゃべるんだろう。
 ママのしゃべるおくちをみてるとめがまわりそう。

「でもさあ」ろくがゆった。
「あかちゃんてどうしてできるんだろう」
 あ、それはこないだまほちゃんにきいた!
「ななしってるよ」
「え!ほんと。どうやるの、おしえて」
「パパとママがいっしょにねるとできるんだよ」
「いっしょにねるの?」
「そう」
 ななはとくいになってろくにおしえてあげた。
 そしたらろくがちょっとだまって、なにかをかんがえるかおをしてから、ななにかおをちかづけて
「じゃあ、おれとななもいっしょにねたことあるから、あかちゃんできる?」
とゆった!
「え!」
 ななはすっごいびっくりした!
 そしてななのおなかをみた。
 ろくはろくのおなかをみた。
「ろく、なんでろくのおなかをみてるの」
「だっておれのおなかにあかちゃんできてるかもしれないじゃん」
「あかちゃんはおんなのこにしかできないんだよ」
 ろくはなんにもしらないんだなあ。
「え! そうなの」
 ろくはこんどは、ななのおなかをみた。
 ふたりでななのおなかを、みた。

「なまえ、なににする」
「なまえ?」
「おれとななのあかちゃんのなまえ」
 そうか、あかちゃんにはなまえがいるのだ。
 そうだなあ、となながかんがえていると、ろくが、いいことかんがえた!とすこしかけあししてななのまえにまわって、ゆった。
「『はち』がいいよ!」
 はち?なんで?
「いちからかぞえてみて」
 ろくがゆうから、かぞえてみた。
 いち、にい、さん、しい、ごお、ろく、なな、はち……
 あ!
「それ、いいね!」
「だろ!」
 ななとろくはにっこりわらいあって、それからママたちにふりむいた。
「ねえ、おかあさん、おれたち、あかちゃんのなまえきめたよ!」
 ママも、ろくのママも、あらうふふ、とわらって
「何ていう名前?」ときいたので、ふたりでいっしょに
「「はち!!」」とゆった。
 すごいいいなまえ! とママたちはてをたたいた。


 あとできづいたんだけど、どうやらママたちは、『はち』は、ろくのママのおなかにいるあかちゃんのなまえだとおもったらしい。
 みんなで、どんどんおおきくなっていくおなかに『はち』とよびかけていくうちに、ろくも、ななも、ななのおなかにいるあかちゃんのことはわすれてしまった。

「これで女の子が生まれたらどうしよう」なんて、ろくのママはわらっていたけど、『はち』はおんなのこにはつけないなまえなのかな。
 でも、そのあとうまれたのは、おとこのこだった。

 びょういんで、うまれたばっかのはちにあって、そしてななが
「こんどは『きゅう』だね」
とゆったら、ママたちは、もうむりよぅ、とわらった。
 ちがうよ、ママ。
『きゅう』はこんどこそ、ななとろくのあかちゃんのなまえだよ。



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