07





正しい言葉選びがわからず、言葉尻に疑問符のつく物言いではあったが神崎は一つ頷いて敷居をまたいだ。正解がわからず、獄寺と、山本は「お邪魔します」といつもより丁寧に挨拶をし玄関を通っていく。玄関扉を開き中に入るよう促すツナはそのたびに「おあがりください」と、これまた正解かわからない返事をして神崎も招き入れたあと、自分もやっと自宅に足を踏み入れたのだった。
ツナの帰省の物音に、台所から奈々が姿を見せた。いつもの山本、獄寺の姿に挨拶をし、それから見慣れない神崎の姿に珍しい友達だと目を見張っている。ツナの女の子の友達は京子とハルくらいだ。それ以外の女の子は物珍しい。

「突然お邪魔して申し訳ありません」

ツナたちに見せる、ぶっきらぼうなつっけんどんな物言いからは想像できないほどに手慣れた丁寧な挨拶をする神崎の姿は意外であった。神崎が自身の名を名乗る。「神崎美琴」というフルネームを初めて知ったのはこのときだった。奈々に好印象を抱かれたようで「ゆっくりしていってねー」と声をかけてもらい、頭を下げている。


「母さん、ちょっと出かけるけどツナ、みんなにジュースとお菓子お出しするのよ!お菓子はいつもの棚、それからジュースは」
「はい!はい!わかってるって、冷蔵庫の右側ね。わかってるよ!」
「もうっ。夕飯もちょっと遅くなるかもしれないけれど、」
「なんかあったの?」


いつもの母親の決まり文句のそれを受け流して、対応していると。奈々にしては珍しく夕飯が遅れるということも付け加えて言われ、ツナは首を傾げた。


「ランボくんとイーピンちゃん、なんだか熱っぽくて二人を病院に連れて行こうとしてるんだけどね」


困ったように「流行風邪かしらねー」とこぼす奈々の困ったような言葉がツナの頭には届かなかった。ランボとイーピンはリビングにいるようで、奈々を押しのけるように台所からリビングをのぞくとソファーの上に二人の姿がある。小さな体はソファーに並んで横たわっており、近づけば、顔は見れば分かるほどに火照っていた。ツナの背後から獄寺と山本が覗き込む。
ただの風邪。そうならいい。だけど、あまりにも、心当たりが多すぎるいま、迷い子のような目をしたツナは振り向いた。神崎を視界にとらえ、物言いたげに唇を動かそうとしたが言葉にならなかったらしい。奈々に並ぶように廊下からこちらの様子を伺っていた神崎は、「すみません」と口にして奈々の前方を横切るように通り、ソファーに近寄ってくる。ツナと同じように膝を折って、ソファーの高さに背丈を合わせ、ランボとイーピンを見つめていた。


-8-


prev
next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -