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 小学校のすぐ近く、背の曲がったおばあちゃんが営業をしている駄菓子屋さんがあって、美子は放課後になるとよく買いにいったものだった。
小さな町のなかの、お小遣いも少ない小学校の子供がポケットマネーでお腹を満たせるような場所といえば駄菓子屋くらいしかない。同じ年代の子供が狭い駄菓子屋にきゅうきゅうになるまで入っているのにならって美子も目を光らせて駄菓子屋の商品を吟味した。
美子が駄菓子屋に行くと、どれにしようかどれにしようかと悩みながらも結局はいつもと同じものに行きつく。砂糖がまぶしてある宝石みたいに可愛らしい色をした糸のついた飴に、凍らせても美味しい派手な色をした棒状のゼリー。あとは、キャップを押し込めばからんとビー玉が瓶のなかに落ちてパチパチと炭酸が弾けるラムネ。あのビー玉が幼い美子にはとても価値のあるもののように見えて、なんとかしてビー玉を取ろうとしたけれどキャップが固くて断念したのを今でも覚えている。

どうして、いまになって、こんなことを思い出すんだろう。

起き抜けのぼんやりとした頭のなかで考える。
視界いっぱいに広がる青い空と白い雲がぐにゃぐにゃと歪んで見えた。







 規則正しい、包丁がまな板を叩く音。まぶたを閉じていてもこぼれるように見えるお日様の光。それから柑橘系の甘酸っぱいようなかおり。
いつもと同じようで、ちょっぴり違う。朝だと頭が認識をして、ぱちりと目を開いた。やわらかいベッドの感触はいつもどおりなのに、視界に入ってくる光景はまるで見覚えがない。

「…あれえ?」
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