26


ーーもう一度、会いたいなあ。

美子はその日、ぼんやりと、思考がふと途切れるたびにそんなことを考えていた。授業中の合間、家に帰ってテレビを見ていて、CMに切り替わったとき。お風呂に入っているとき。そして、暖かな布団に入って、眠りに落ちるとき。

ゆうらり、体が揺れる。揺りかごのように、ふらふら、ふらふら。
美子は慣れない感覚に僅かに身じろぎをして、体を支えるものがなくなった。ドン!と激しい音を立てて、体に痛みが走る。

「いったーーい!!!」

思わず出た言葉に自分でもビックリして、美子は飛び起きた。視界に入る景色は、自分の部屋ではない。ともすれば美子が最初、夢の中で目覚めた場所とも違う。天井で回るシーリング、部屋の一角にはバーカウンターと、上へとあがる階段に、大きな宝箱。そして、ナミが教えてくれた海図なるものが机横の本棚にたくさん並べられていた。

美子は座り込んだまま、視線を横に向ければソファーの背が倒されていて、ベッドの形になっているものを見つけた。いわゆるソファーベッドというやつに、自分は先ほどまで寝ていたらしい。落ちたけど。
キョロキョロとあたりを見回していると、天井からカツカツと床を踏み鳴らす音が聞こえてきて。階段の先にある蓋が開いた。ひょっこりと顔をのぞかせた姿には見覚えがある。

「美子!!」

ふわりと揺れたオレンジ色。ナミが顔だけをのぞかせながら満面の笑みで美子の名前をよんだ。足早に階段を駆け下りてくると、ぎゅうと強く抱きしめられる。


「よかったぁ、美子ってばずっと寝てるんだから」


夢のなかで、美子はずっと寝ていたらしい。
言われてみれば、確かに寝すぎた日のように目がしょぼしょぼとする。うまく開かない目をこすっていると「お風呂にはいる?」とナミから申し出があったのでお言葉に甘えることにした。シャワーとお風呂が一体になったユニットバス式。夢のなかのわりにしっかりと現代的な作りに感心をしながら、カランをひねった。熱いお湯がシャワーから流れ出て、顔面からほどよい熱さのお湯を浴びる。頭がシャッキリと覚醒をして、目の覚める感覚に。夢のなかなのに、目が覚めるってへんなのと考えていた。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -