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 ナミは、みかんがたっぷり入った籠からひとつみかんをとり、この世界のことを説明してくれた。

ヘタから下にむけてぐるりと一周、指でみかんのまるみをなぞる。
これをこの世界では「レッドライン」と呼び、その線に対して垂直に走る航路を「グランドライン」と呼ぶ。そうしてレッドラインとグランドラインの縦線と横線によって分けられた四つの区域が、イーストブルー、ウエストブルー、サウスブルー、ノースブルーというわけだ。
グランドラインはカームベルトと呼ばれる無風の海の区域に挟まれている、らしい。

そして、その海を自分の目で見て、海図を書くことがナミの夢なのだと、美子にきらきらとした瞳を向けながらナミは語った。
手元にある地図はナミが幼い頃に書いたのだという。

美子には、いまだ将来の夢というものが明確になくて、刺激のない田舎が嫌だからとりあえず都会に出て大学に行こうかなくらいのものだった。得意なものと、興味は人並みにはあるけれど、他人に誇れるたった1つのものは思い付かない。
漠然と、すごいな、と思う。足並み揃えていっしょの横並びではない、唯一のものがナミにはある。

「あたし、もう一度旅に出るの。旅してお金を稼いで、この村を買って…」

ナミは、きらきらとした目をそうっと閉じた。この村を買う、と、その言葉がささくれのようにひっかかったけれど、追求はしなかった。

「それから世界地図を書くの?」
「うん」
「…そっかあ〜」

自分より明確な答えがあって、道がある。そんなナミの夢に「頑張ってね」と口にするのは合わない気がして、相づちだけうった。
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