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 なんでもない、と口にする、ナミといわれた女の子とノジコのやりとりに、ああ、と納得をする。着飾らない、ありのままの、身内の会話だ。ナミといわれた女の子が美子が会話に口を挟むには躊躇われる精神状態だったので、美子はひたすらに「お口にチャック」の状況だった。そのままこそこそと勝手口から外に出ようとしたのだが、ナミと目があう。

「……よかった。死んじゃうんじゃないかって、思ってた」
「ああ、ごめんごめん。話し込んじゃって。これがあたしの妹、ナミ」

ナミの目が、安堵したようにくしゃりと歪む。
ノジコなナミを妹と紹介したことで、やっぱりと納得がいく。美子を助けてくれた人物だ。

「あの、助けてくれてありがとうございます」
「ううん、無事でよかった」

ぺこん、と頭をさげれば温かい言葉がかえってきた。
怪我は、体調はと幾つか質問をされて、それから口にしたのはノジコと同じくここを離れたほうがいいとのことだった。

「この村にいま、麦わら帽子を被った男がいるの。あんたそいつに会って、船に乗せてって言いなさい。このあたりで一番交易が盛んなローグタウンにまで連れていってもらって、そこで別の船を探すの」
「ろ、ろーぐたうん?」
「そう。そこなら荷物を運ぶ船がたくさん出てるだろうから、あんたのいた場所に帰る船は少なからずあるでしょう?」
「かえる、ふね…」
「あの海流で生きたまま浮いてたってことはこのあたりの人間でしょ?流されて何も持ってないみたいだったから…。少ないけどこれ、持ってなさい」

ナミの口から出る言葉に頭がついていかない。ローグタウンと呼ばれる場所を知っているわけでもなければ、帰る場所もきっとない。ここはわたしの夢なのだと口にすれば、彼女たちはどんな顔をするのだろうと頭を悩ませていたら、ナミが美子の手に数枚紙切れを握らせた。

「これなあに?」

ーーそして、冒頭にいたるわけである。
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