最初はお遊びのつもりやった



ただおもろい状況やと思うて、蒼ちゃんに近づいて、楽しませてもらおうとしか考えてへんかった


なのに


いつからやろな


蒼ちゃんに惚れる自分がおったんや









俺と蒼ちゃんが付き合い始めたという噂はあっという間に広まった


それもそのはず、俺らは傍から見たらバカップルで


朝は手を繋いで仲良く登校

塾では一日中べったり

昼飯も中庭で二人きり

帰りだってわざわざ寄り道をして帰った


蒼ちゃんのことを"蒼"と呼び捨てで呼ぶようにもなった


蒼は恥ずかしがって"志摩くん"のままやけどな

………奥村くんのことは下の名前で呼んどるくせに




そうやって蒼と関わりをもっていくうちに

惹かれてしもうた


だけど、悔しかった


二人きりになっても蒼が気にするのは奥村くんばかり

口を開けば燐、燐って

うるさいわ

俺の名だけを紡いでいればええねん


どうしようもない独占欲が支配して、黒い感情だけが胸にたまる


それを吐き出してはいけない


吐いたら、この関係を終わらせてしまうやないか


適わぬ恋だとしても、うわべだけの形だとしても、


蒼と少しでも近くにいたくて、脆い糸を繋ぎとめる事に必死だった




せやけどな、もう、




限界や




『ねぇ、志摩くん!燐は今どう思ってるかな?』


「…………。」


『志摩くん…?』


「燐燐、うるさいねん」


『え…?ど、どうしたの?』


「俺だけを、見てくれたらええのに」


『何言って……んっ!!』



これ以上、蒼が俺以外の名を呼ばないよう、蒼の紅い唇をふさいだ


嫌がって暴れる蒼の抵抗など男の俺には無意味で


そのまま舌を絡めた


『ふ、んぅ…!!』


キスしたことないんやろか


息苦しいと訴えんばかりに俺の背中を叩く


それを無視して口内を侵し続けたが流石に限界だったのか、先ほどより強く訴える蒼


名残おしいが、唇を離してやると、やっとこ酸素を取り込んだ蒼は頬をピンクにそめ、目をとろんとさせながらも俺を睨んできた


そんなん可愛いやけなのに



『志摩くんの、バカ!!本当に付き合ってる訳じゃないんだから、キスする必要ないじゃない!!』



"本当に付き合ってる訳じゃない"


その言葉が胸に刺さって

あかん、痛いわ





「そうやった……堪忍な、」


『え?あ、う、うん』



謝れるとは思っていなかったのだろう


動揺が隠しきれてない


そんな一つひとつの仕草や表情が愛しくて


あぁ、手放すんわ惜しいわな


でもここで終わりや


約束を破ったんやからな


もう俺に蒼といれる資格などない


どうか上辺だけのカップルを演じきれなくなった俺を許してな



「もう、終わりにしよか」


『え?どういうこと』


「俺、蒼の事が好きになってしもうたんや」


『え…?えと、』


「分かっとる。蒼の気持ちは知っとるわ」


『………ごめん、』


「蒼が謝る必要ない。そろそろ俺が邪魔になるやろうから、もう前の通り蒼と俺は友達や」



蒼が返答する前に、俺はそれを告げて早々とこの場をさった


これでええんや


俺は間違ってない


だからさ


泣くなや自分


ださいやろ





……まあ、誰も見てへんし


今日は許してやろか




「ク、ソっ……!!」






隣にない温もりにしがみついて、一人泣いた









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