知っていた

二人が両思いだということも

お似合いだということも


なのにどうしてだろう

涙がとまらないんです

心が

痛むんです


"正直"が抑えられなくて





辛いんです








「燐、一緒に帰ろう!」


「あぁ!」


横からふいに聞こえてきた二人の声はとても弾んでいて


私の気持ちを闇に突き落とす


しえみちゃんと燐


この二人は私が塾に入る前から仲が良かったらしく

燐を好きになった私の入る隙間など、どこにも存在していなかった

胸にずっと秘めてきたこの想いを伝えたいのに、伝えられなくて、もうどうしたら良いのかわからない



「おい、蒼!」


『え…、わたし?なに?』


「お前も一緒に帰るか?」


『あ、いや、私はいいや!』


「そうか?じゃあ、また明日な!」

『うん、バイバイ!』



一緒に帰れる訳ないじゃないか

二人といたら自分が傷つく

もうこれ以上辛い思いをしたくない

それに、邪魔者になるだけ


でも…振り向かせたい


「そう思うんやったら…、どや、俺と付き合ってみひんか?」


『……え?』



急に聞こえてきた声に驚き振り向くと、そこには女好きで有名な志摩くんがいた


「な!!女好きとは失礼やな!!」


『……なんで私の心読めんの?』

「読んでるんちゃうわ!!蒼ちゃん全部声に出とるんや!!」


ま、まじですか
それは申し訳ないことをした


ってそれより気にしなくてはいけないことがあるじゃないか



さっき………なんて言った?



「俺と付き合ってみなどうやって言ったんや」



『それは…どういう意味?』



「奥村くん、振り向かせたいんやろ?やから協力してやってもええでっちゅー事ですわ」


『ほんと!?でも、どうやって?』


よく分からないよと抗議をすれば、「はぁ」と呆れられた

志摩くんに呆れられる私ってどうなんだ


「わからん人やなぁ!!何度言わせはるんですか?だから、俺と蒼ちゃんが付き合ってる噂が流れたら、奥村くんの気をひく事もできるんちゃいますか?」


『な、なるほど。でもいいの?』

「全然構いまへんよ!むしろ大歓迎や!」


『ありがとう!!じゃあ、これからよろしく頼むね!』





たった今ここに私と志摩くんの偽りカップルが誕生した


これで何かが変わるだろうか

ほんの少しでもいいの

私に"希望"というものをください



このあとどうなるかなんて誰も分からないまま

その扉を開けてしまった








報われない恋だと、思いたくないの









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