触れられる距離なのに、心が遠くて辛かった
貴方が隣にいると嬉しいのに、同時に募る不安
この心が冷めないうちに温めて
学校に行けば、女の子達に囲まれて楽しそうにおしゃべりをしている彼
チクリ
痛む胸をギュッと押さえ付ける
これも既に見慣れた光景じゃないか
私は早々とその横を通りすぎる
教室に入ると私の定位置である窓際に燐がいた
『おはよう、燐』
「あ?おっ、うみじゃねぇか!はよ」
『今日は随分と早いね』
「それがさ、聞いてくれよ!!雪男のヤツがな…」
燐と話していると心が穏やかになる
ほっこりとした気分に浸っていたその時
「うみ、ちょっと来てくへん?」
『え?ちょ、』
腕を思いっきり捕まれたかと思えば、物凄い力で引っ張られる
その腕が誰のものかを把握するのに時間がかかった
『廉造?は、離してよ』
「何でなん?」
『は?何言って「何で奥村君と話してんのや?」
痛いと言ってるにも関わらず腕を離してくれない廉造は屋上に私を連れてきてもなお、その腕の力を緩めてはくれなかった
『何って、』
「何で、何で、」
ただ"何で"とだけしか言わない
それどころか俯いてしまった
それを見て、
何故だろうか、私は彼を抱きしめていた
『どうしたの廉造?』
「……不安なんや」
『何が?』
「うみが遠くに言ってしまう気がすんねん」
初めて聞く廉造の本音
そうか、
私と同じ気持ちだったんだね
『私はここにいるよ』
「……、うみ、俺から離れんといて…、」
『大丈夫、離れないよ。ずっと隣にいるよ』
「…………俺、嫉妬してたんや、奥村君に。うみをとられる気がして。不安で、うみが俺の事好きっちゅー確証がほしくて、うみにも嫉妬して欲しくて、」
『それで女の子とイチャイチャしてたの?』
「………、堪忍やな」
申し訳なさそうに謝る彼に私は笑みをこぼした
だってさ、安心したの
私に冷めた訳じゃないって、分かったから
『私もね、嫉妬してたんだよ』
「え?」
『だから同じ。おあいこ。お互い様』
そういえば、驚いたように顔をあげる彼
やっと見せた顔があまりにもマヌケだったので思わず笑ってしまった
「…何笑っとんのや」
『だって廉造、可愛くて…!』
「かわいい!?うわ、地味にショックや…!!」
そう言って拗ねたように口をとがらせる廉造に膨らむ愛しさ
重なる世界を飲み込んだ瞬間だった
『廉造、わたし、廉造の事やっぱ好き』
「…俺もお前が愛しくて仕方あらへん」
お互いに見つめ合い、笑ってみた
私たちを包むその夕日は温かくて、心地よかったのは忘れない
夕日に埋もれる二つの影
ほんのりピンクの頬を夕日に隠してもらっていたことは内緒だよ?
…………………………
ヘタレ志摩くん\(^p^)/