気がつけば雨


空はとてもよどんでいて



晴れそうのない曇ったその様子に思わず溜息



……傘、持ってきてないや






雨の日は嫌い、大嫌い



嫌なことがあった日はいつも決まって雨の日だった









「ザンザス様、今度はどちらへ連れていってくださるの?」



「てめぇが決めろ」



「もう、つれないわねぇ」





不意に耳に入った、聞き覚えのある名前に振り向けば




大好きなあの人と、とても美人な女性




楽しそうにおしゃべりをしながら通り過ぎる








ほらね



だから嫌いなの、雨の日って



本当に良いことない





水溜まりに写る自分があまりにも惨めで、



思わず足で水面をける



水面が歪めば、そこに写る私の顔も歪む



切ない、痛い、ツライ



頬を伝う液体が、雨なのか涙なのかさえ分からない








「………風邪引くぞぉ」




急に、上から雨の雫が落ちてこなくなったかと思えば聞こえてきた柔らかい声






『……スク?何でここにいるの?』



「お前が傘忘れて出て行ったから、迎えに来てやったんだぁ」



『わざわざ?………わたしの事探してくれたの?』



「あぁ。……だから泣くなぁ」



『泣いてないよ、』



「嘘つけ。頬が濡れてんじゃねぇか」



『これは雨だもん。』



「じゃあうみは何でそんな悲しい顔してんだぁ?」



『…え?』




その瞬間、冷たくなっていたこの体が温かくなる

ふわりと鼻をくすぐる優しい匂い

至近距離にある銀色の艶やかな髪


スクに抱きしめられているのだと認識した




『スク、苦しいよ、離して、』



「離してやらねぇ」



『ちょ、恥ずかしいよ、』



「恥ずかしがってろぉ。俺が隠してやらぁ。」




『……どうしたの?なんかいつもと違う』






「…………俺が側にいてやる。だから泣くなぁ」



『!!……スク、』



「うみのことが好きだぁ。いつもお前を見ていた。だからうみのことなんて全てお見通しだぁ。」



『………わたしはザンザスのことが「それも知ってるぞぉ。」……じゃあ、どうして?』



「好きな奴が他の男を見てようが俺には関係ないからなぁ。」



『!!でも、わたし、「う゛ぉぉおい!!!ごちゃごちゃうるせぇぞぉ!!!黙って俺の隣にいろ!!!」……強引』



「今更知ったのかぁ?」




『ぷふっ、否定しないんだ。…うん、今更かも………思えば、スクの事なんも知らないな…』



「じゃあ今から知ればいい」



『………そうだね』



「うみ、俺と付き合え」



『強制ですか』



「あぁ、お前に拒否権なんてやんねぇ」



『…拒否権なんて必要ないからいいもん』



そう言えばさらに強く抱きしめられる


でも不思議と嫌悪感はない






『スク、あのね、晴れたみたい』


「あぁ、そうだなぁ」



『もう、大丈夫。わたし平気だよ。………でもね、もうしばらくこのままでいたい』




「あぁ。ずっとこうしててやる」




心地好い、



だから瞳を閉じてみた



そしたら見えたの



澄み切った青空が



あぁ、本当に晴れたんだね







rainy day


雨の日はもうきっと来ない
あなたが側にいてくれるから



……………………

6月は湿気がハンパないから嫌です