涙は優しい味がした




「拝啓 スクアーロ

近頃は気温も上がってきて暑くなってきましたがいかがお過ごしでしょうか。私はわりと暑いの平気なのでイタリアの夏は涼しいくらいです。貴殿は髪が長いので鬱陶し 暑そうですがいかがお過ごしでしょうか。私の方はと言いますと、」


…って、

やめやめ。何書いてんだか。

こんな堅っ苦しいの私らしくない。


私は今、便せんにペンを走らせ、くしゃくしゃに丸めてはまた書き、丸めては書き、の繰り返し。

何をしたいのかと聞かれれば、…本当、何がしたいんだろう私。

今日こそ彼に長年の想いを伝えるんだ、って奮起したものの、思い立ってから既に一週間は経過している。

その間何度も手紙を書いてみたり(結局は捨てるけど)、いつもよりちょっぴり女の子らしい服を着てみたり、メイクだって変えてみたり、挙げ句夜中に彼の部屋にお邪魔してみたりしたのに、…したのに、一向に何の変化もなかった。

便せんの文字が滲んで見える。


彼は私の事を、何とも思っていない。


その言葉が頭の中でこだまする。

あ、文字が滲んで見えるんじゃなくて、実際にインクが滲んでるんだ。

ごしごしと擦ったせいで酷く掠れた黒い文字がまるで、もうこれ以上先には進めないと煽っているかのようで、そんなのは見たくなくて私はペンを投げ出しそのまま部屋を後にした。


歩いても歩いても果てなく広がる廊下に嫌気が差す。

いっそここで大声で泣いちゃおうか、

なんて思ってみるけど、そんな大それた事できる訳がない。

人気のないひたすら真っ直ぐな廊下を歩き続けると、ようやく突き当たりに出くわした。


―ドン

肩が誰かさんとぶつかった。

それが誰だろうとどうでもよくて(ボスだったら厄介だけど)、顔を上げる気力も無いまま、

『あ…、ごめんなさい』

とそのまま去ったつもりだったのに、私の足はその場から一歩も進んでいなかった。心なしか腕が痛い気がする。

不思議に思って振り返ると、私の腕は誰かの大きな手によって掴まれていた。

そっと目線を上に向ければ、そこには

―!

一番会いたくなくて、一番会いたい人。


「よぉ…」

『ス、クアーロ』

「お前、泣いてんのかぁ」

『あ…、違っ』


急いで涙を拭ってみたけど時既に遅し。

目の前にスクアーロの顔が近付いてきて思わず目をそらした。


「嘘つくんじゃねぇ。頬が濡れてる」

『こ、これはそのっ』

「……、まぁいい」

『そ、それよりスクアーロ!何でこんなとこに?』

「あ?ちょっと用があってなぁ」

『こんな場所に?』


スクアーロが向かってた方向には、幹部の人達がわざわざ出入りするような特別な用事は見当たらないはずだ。

だってこの先は、一般隊員や私みたいな下っ端隊員の部屋だけ…


「名前、なんか辛い事あったら一人で抱え込んでんじゃねぇぞぉ。俺がいてやるからよ」


…あぁ、ダメだよスクアーロ。そんな事言われたら、また貴方に溺れちゃうじゃない。

スクアーロは優しいから。

その優しさに私は甘えてしまうんだよ。


『スクアーロ、そういう事は、好きな女の子だけにしか言っちゃダメなんだよ』


また涙が溢れそうになるのを必死でこらえる。

スクアーロの好きな女の子、

考えたくもない。


「あぁ゙、そうだな…」


そう言ってスクアーロは私を優しく抱き寄せた。


『っ、スクアーロ!だからそういう事は―』

「好きな女にだけ、って言いてぇんだろ?」

『そうだよ、だから離して…』


スクアーロの匂い。落ち着く。

でも、耐えられない。

私の僅かな力で突き放そうとすれば、スクアーロはもっと強い力で私の頭を引き寄せてきた。


「俺に離す義理はねぇ」

『え?』

「好きな女にだけこういう事していいんなら、俺に名前を離す義理はねぇ」


…え、

…頭が上手く回ってくれない。

こういう肝心な時に働かない自分の頭を憎む。

スクアーロの腕の中から彼を見上げれば、彼は真っ赤になってそっぽを向いてしまった。

あ、耳まで真っ赤だ。


『スクアーロ…?』

「お前なぁ、最近めっきり女らしくなったりすんじゃねぇぞぉ。それに夜中に俺の部屋まで押しかけてきやがって。俺をその気にさせるような事すんな゙ぁ!」

『…スクアーロ、それって』

「ここ一週間、俺がどれだけ我慢してたかわかるかぁ…!!」

『スクアーロの用ってもしかして、私、に…?』

「当たり前ぇだ、じゃなかったらこんなとこまで来る訳ねぇ」

『でもっ、私がスクアーロの部屋に行っても追い返されたじゃないっ』

「あのなぁ…、夜中に好きな女が自分の部屋に来て何も思わねぇ訳ねぇ奴があるかぁ。色々とヤバいだろぉが」

スクアーロが私を。

そんな考えがよぎった私の頬は緩んでしまって。

私が彼を想い、彼も私を…

こんなに嬉しい事はない。


『スクアーロ、私ね、貴方の事が―』


せっかくいい雰囲気だからこのまま想いを伝えようとしたのに。それは彼によって遮られてしまった。

彼の唇によって―


「ゔぉぉい、そんなのはな、男が先に言うもんだぁ」


スクアーロの鋭く真剣な眼差しに体が貫かれるみたい。

まだ唇の感触が残ってる…

私、スクアーロとキス、しちゃったんだ…


「名前が好きだぜぇ」


あれ、スクアーロの顔がぼやけて見える。

でも、その視界はすぐに鮮明になった。


「泣くんじゃねぇ、と言いてぇ所だが、泣きたかったら泣け。俺がいつでもお前の涙、拭ってやらぁ」

『っ、スクアーロ、大好きだよ』

「あ゙ぁ」


例え泣いたとしても私は一人じゃない。

涙を拭ってくれる彼がいる。

彼が泣いちゃう時は、そばにいて私が拭ってあげる。

本当に、こんな幸せな事はない。


唇がまた重なった。





優しい味がした






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キリリクで紅様から頂いた小説です!!

12345ヒット、おめでとうございます!!

にしても、やっぱり素晴らしいですね、
も、尊敬って言葉以上の言葉が欲しいです←

今回はちょっぴり大人めで、また違った甘さがあり、刺激的でした//
ていうか、

このスクかっこよすぎやろぉお!!!!!!!

さりげなく、そんな発言しないでぇえ!!!

惚れてまうやろぉお!!!

あ、もう惚れてるか(笑)

こんなに萌えをいただけて、この璃皇、今なら嫌いなレバーも食べれそうだぁあ!!(無理です

くぅちゃん、大好きです!!ありがとうございました!!





 


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