「よぅ苗字」 「…あー、人違いじゃないですか?」 「相変わらず酷ぇ態度だな。もう少し愛想良くしてれば可愛いのに、勿体ねぇ」 「余計なお世話ですよ。あなたこそいつまで私に付き纏うんですか?」
学校の帰り道。今日も懲りずに自称イケメン、垣根帝督が私のもとに一直線にやってきた。いつもの赤いジャケットのポケットに両手とも突っ込んでつかつかと歩み寄ってくる彼。なんか中二とかイケメン気取ってるよねあの人。残念な人じゃない?顔は良いのにな、顔はね。 そのまま盛大に転ばないかな…きっと自称イケメンな顔が崩れるて恥をかくだろう。
「お前…今失礼なこと考えてたろ」 「………、別に」 「今の間は何だ」 「気のせいですよ」
そんな自称イケメンと知り合ったのは本当に偶然、昔にいそうなチンピラ共から逃げてたら助けられた。いや、正確に言えば彼に私を助けさせた。私が彼にタックルをして助けを求めたのがいけなかったのか…私のお馬鹿。
そんなことがあってから頻繁に見かけるようになったのだが、まさかストーカーまがいなことされるなんて…大きく息を吸って自称イケメンに聞こえるようにわざとらしくため息を付く。さて、そろそろやりますか。
「お、ため息つくと幸せが逃げんぞ」 「もう逃げる幸せもないから平気です。お気遣いありがとうございま…した!」
したと言うと同時にスタートダッシュを切る。自称イケメンの横を今までで最高の速さで走り抜けた。これはギネスものだね。
「あ、おい!おまっ…」
彼が何かを言う前に人込みを掻き分けて路地を曲がっては走るを繰り返した。 息をする間もない程走ったところで止まって、肺いっぱいに空気を吸い込む。
「ここまでくれば平気だよね…」
独り言を漏らして壁を背にずるずると座り込む。流石にここまで追い掛けてくる馬鹿はいるわけ…
「っ名前!」
!?
いたわ、ここに馬鹿いたわ。って… 声が聞こえたのは後ろなのに振り向いたら誰もいない。もしかして私の耳がイカレた?
「ここにいるっての、バカ名前」 「なっ…馬鹿はどっちです!この、」
大バカ……! なんて言えなかった。理由は実に単純明解。
「名前!頼むから話を聞けっ」 「ぜ、全力で拒否します!!」
え、自称イケメンに翼生えてんだけど何コレ…え? ばさばさと翼をはためかせてふわりと軽い動きで目の前まで降り立った自称イケメン。なにこのメルヘンチックな再会…。まわりの小鳥達が自称イケメンに仲間意識持っちゃって寄ってきてるんですけど…鳥肌がやばい、色々な意味でやばい。
「って、なんで私の名前知って…」 「んなことどうでも良いだろ、とりあえず俺の話を聞け」
腕を掴まれて自称イケメンと向き合う形になった。って、小鳥さんがお互いの肩に止まってるんだけど…食えるかなこの鳥。
「あのな、苗字……いや、名前」 「はい?」 「俺、本気でお前に一目惚れしたんだ」 「はい、で?」 「だから…」 「ああ、その先の台詞はもうわかってます」 「本当か!?」 「もちろん」
―まずはお友達から―
(でしょ?) (え…それしか選択できないの?)
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